吉永小百合さんと天海祐希さん主演で、「最高の人生の見つけ方」という映画があります。
この映画、もともとは2006年公開のハリウッド映画をオリジナル作品としています。ハリウッド版では、ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンという名優2人が主演しました。邦題では「最高の人生の見つけ方」ですが、原題は「THE BUKET RIST(バケットリスト)」です。
バケットリストとは、「死ぬまでにやりたいことを書いたリスト」のことです。上記の映画を見ると、最高の人生のためにバケットリストが持つ力が本当によくわかるので、ぜひ見ていただきたいのですが、簡単にあらすじをご紹介したいと思います。(ぜひ観てみよう!という方は、ここから先はまだ読まないでくださいね。)
まずハリウッド版から。数回結婚と離婚を繰り返している、現在独身で億万長者の会社経営者エドワード(ジャック・ニコルソン)と、本当は学問が大好きだけれど、家族のために大学生活をあきらめて、そのままずっと家族のためにまじめに働き続けてきた労働者カーター(モーガン・フリーマン)。
この、今までの人生では関わることのなかった2人が、病院の2人部屋で偶然同室になります。2人に共通しているのは、余命数か月でもう助からないということだけ。
2人は、カーターがなんとなくメモに書き出したバケットリストを実行すべく、旅に出ます。リストの内容は、スカイダイビングをする、ピラミッドに登る、サバンナでライオン狩り、泣くほど腹を抱えて笑う、荘厳な景色を見る、などなど。エドワードの資金があるから豪華な旅行ができるように一見見えますが、旅を通してお互いを知りながら心を通わせていく姿が感動的でした。ケンカしながらも、エドワードはカーターのおかげで絶縁された娘と孫に会いに行くことができました。嫌がっていた割には、穏やかな顔をしていました。家族を捨てていくのかと妻に大反対されながらも旅に出たカーターは、家族と離れて旅に出たからこそ、より家族や妻の存在に感謝することができるようになりました。無意識のうちに、家族のためにという言葉で自分を抑圧して生きてきたのでしょう。
エドワードはカーターのお葬式で、リストの「赤の他人を助ける」という個所に線を引いて消しました。数か月まで赤の他人だった人物に、人生の最後で救われたと心から感じたのでした。
日本版も、基本的にはハリウッド版をオマージュした作りになっています。幼いころには貧しくて借金取りが家に取り立てに来るような生活をしており、背が高いことからいじめにもあっていたが、一転してホテル産業のカリスマ社長として大金持ちになったマ子(天海祐希さん)。大学卒業後すぐ結婚して、以降ずっと専業主婦をしている幸枝(吉永小百合さん)。やはり偶然同室になった二人の共通点は、余命数か月。二人は、病院内で会った14歳の少女が残したバケットリストを、少女の代わりに実現しようと旅に出ます。最初は何の変哲もない普通の主婦である幸枝を馬鹿にするような態度を取ることもあったマ子ですが、次第に懸命に生きている普通の人たちを尊敬する気持ちが生まれます。そして幸枝も、ただの鼻持ちならない成金だと思っていたマ子が、心に傷を抱えつつ懸命に生きてきた人生を理解していきます。映画の中では、若いマ子の方が先に亡くなります。マ子は、バケットリストと幸枝のおかげで、人生の最期を悩んでいる暇もないくらい充実して過ごせたと、感謝の手紙を残します。
ただ、日本版ならではと思った点があります。幸枝の夫が家事一つ手伝うこともしないダメ夫であることと、何年も自室に引きこもっている成人した息子がいることでしょうか。最終的に夫と息子は、幸枝の気持ちを理解して自立のための努力するようになります。死期がせまらないと理解してもらえないのかと若干悲しみを覚えましたが、察してもらうのを待つだけでなく自分の気持ちを伝える努力も今までに必要だったのかもしれません。
2本の映画を通して、バケットリストが持つ力の大きさに圧倒されました。突拍子もないことを書いたようでも、なんとか実行させようと頭を使い、死を恐れている時間なんてなくなっていきます。残された死を待って後悔しながら過ごすよりも、まだまだやらなきゃいけないことがたくさんあると思って生きる方が、考えただけでも楽しそうですよね。そして、二人一緒だっからこそ実現できたのではないかと思います。自分ひとりだったら、気まずいからいいや、とあきらめてしまうようなことでも、なかば無理やり協力して成し遂げようとする。迷うくらいならやっちゃえ!
そして二人の死後、残された家族の表情が笑顔だったことがちても印象的でした。
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