2019年の春ドラマで、吉高由里子さん主演の「わたし定時で帰ります」が様々なところで話題になりました。
もともとは、題名からして、仕事は定時までしかやらないスタンスを貫き、仕事よりもプライベートを重視して楽しむ姿を描くドラマかと思っていました。
全く見る気もありませんでしたが、たまたま娘が見ていたのを一緒に見て、なかなか考えさせる内容であることに驚きました。
このドラマには様々な人が出てきます。一緒の職場で働く人たちは、自分で選んで入社してきたわけですが、仕事に対する考え方はみんな違います。しかし、本当に悪い人はいませんし、決定的に間違っている人もいません。みんな、一生懸命なのです。
どんな登場人物がいたのか、紹介します。(他にもドラマ内での主要な登場人物はいますが、今回省いている人物もいることはご了承ください。)
登場人物
1.東山(主人公)
ディレクター。
新入社員で入社した前職で、激務とパワハラなどのストレスから過労に陥り、生死をさまよう大怪我をする。
その経験から、転職後は徹底的に仕事を効率化させることにより、定時で帰る仕事スタイルを貫く。
しかし無茶な案件のチーフになったことから、自分だけでなく同僚たちが無理をして疲れ切っていく姿を辛く感じるようになる。
2.種田(主人公の元婚約者で、上司)
副部長。
子供のころから、人の期待に応えることで自分は認められるという行動原理を持つ。
口癖は、「死ぬ気でやればできる。」「寝なくても死なない。」仕事で悩んでいた実の弟に対してもこの言葉をかけ続け、弟は追い詰められて引きこもりになって心を閉ざしてしまう。
仕事は非常に有能だが、ワーカホリック気味。かつて主人公との婚約が破談になった原因も、過労で倒れた際、主人公よりも仕事の方が大事だと言ったことによる。
3.来栖(主人公の部下。)
新入社員。
何かミスをして叱られると、口癖のように「仕事を辞める」と言い出す。自らの不注意で会社全体の大問題に発展した際には、責任を取るのが怖くて現実逃避してしまう。
一方、仕事が出来る種田にあこがれを持っており、新人の自分が会社の役に立っているのか自信がないという側面を持つ。
4.三谷(主人公の同僚)
子供のころから皆勤賞。
絶対休まないことが自分の取り柄であり、残業や休日出勤をすることで自分が認められると思っている。
過労でミスを連発するが、1日休んだことでとても疲れが取れて頭がスッキリしたことにより、休養が仕事にとって必要だということを理解する。
5.賤ケ岳(主人公の元上司)
双子を出産し、育児休暇から復帰してきた。
子供や家庭を理由に早く帰ったり休んだりすることは「負け」だと信じて我武者羅に働こうとするが、主人公に「先輩は何と戦っているんですか?」と問われて返答に詰まる。
しかし、子供の病気の時の対応や、帰宅後も夜中まで家事をする生活に疲れ切り、夫の親の介護をきっかけにいったん仕事を離れて夫の実家に行くことを選ぶ。
6.福永(主人公の上司)
部長。種田の元働いていた会社の社長だった。
景気が悪くなった時期に、家や家族を失ってまで会社のために働いたが、結局倒産。不景気を経験しているせいか、利益にならない案件でもとにかく仕事があることこそみんなのためと考えている。
社員の残業を当然と思っており、ブラック上司と周りから思われている。「仕事が何よりも好きってことがそんなに悪いことなのかな?」というセリフから、本心はでは仕事がとても好きなんだと思われる。
7.吾妻(主人公の同僚)
エンジニア。
人生に夢や希望を見いだせず、孤独な自宅に帰りたくなくて、夜中まで会社に残って時間を潰している。
主人公に、前提としての大きな夢がなくても、給料日や仕事後のビールを楽しみに生きていくことも幸せなことだと教えられる。
まとめ
いかがでしょうか。自分に似ているな、と思えるような人物もいるのでは?
ド ラマ内の会社で働く人たちは、みんな、自分がここ(会社)にいていいのか、不安を抱えているように感じました。
けれどみんな、自分の人生をもっとよくしたい、幸せになりたいと考えています。自分のことだけではありません。周りの役に立って会社に貢献したい、やりがいのある仕事をしたい、とも考えています。ブラック上司の福永ですらそうです。
高度経済成長期のように、企業戦士を専業主婦が支えるのが多数派という時代ではなくなりました。少子高齢化や働く女性が多数派になったことにより、育児や介護を人任せにできなくなり、みんなが組織が定めた条件通りに定年まで働くというスタイルをとることは難しくなりました。
医療の進歩により、闘病しながら働き続ける人も増えていくことでしょう。昨今の働き方改革では、残業しないで帰ることばかりがフォーカスされているように感じますが、そればかりではないように思います。
仕事が大好きでずっと仕事をしていたい人や、決まった時間に出勤するのが難しい人は、会社員として働くという選択肢以外に起業という手段もあるでしょう。
日本は諸外国と比べて起業する人の割合が非常に少ないのですが、今後は増えていくのではないかと予想しています。これからの組織では、一緒に働く人たちの多様性を認め合い、お互い頼ったり助けたりしながら全体としての仕事を進めていくことが求められるのではないでしょうか。
そしてそれは、有償の仕事だけについて言えることではない、家事や育児や地域活動などの無償の仕事にも当てはまることだ、という点も忘れずに付け加えておきたいと思います。
ドラマの最終回で、なんのために働くのか?という問いに対する主人公の答えは、「分からない」でした。
各々が働きながら自分の回答を見つけていけたら、と思います。
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