我が家に子犬がやってきて、1年半がたちました。
家の中で飼うなんて信じられない、無理、と思っていましたが、あっという間に家族の中心になりました。
彼(犬)は、いつも居間の窓から外を眺めており、家族が帰ってくると立ち上がって吠えたててお出迎え。
尻尾を振って飛びついてくる姿に疲れも忘れます。
すっかり犬好きになった私が最近テレビ番組と新聞の連載で初めて知ったのが、セラピードッグです。
驚きでした。
セラピードッグとはなんぞや??
日本では、日本人ながら「イエローブルースマン」として全米ツアーを成功させ、世界的に活躍したブルースシンガー・大木トオル氏が、熱心に普及活動をされています。
セラピードッグは、人への忠誠心と深い愛情で、高齢者をはじめ、障害を持つ方や癌や精神の病気の治療を必要とする方の身体と精神の機能回復を補助する活動をしている犬のことです。
セラピードッグがリハビリに寄り添うことで、記憶を取り戻したり、動かなかった手足が動くようになるといった奇跡のような効果がしばしばみられるそうです。
無表情だった人の顔に笑顔が戻ることも。
セラピードッグは高齢者施設や病院の他、刑務所や被災地への訪問など、様々な場所への訪問を行っています。
特筆すべきは、捨て犬や被災犬など、行き場を失って殺処分になりかけていたような犬たちを救助してセラピードッグに育成しているという点です。
大木氏は子供のころに一家離散を経験しており、後で迎えに行けると信じて愛犬を置いて家を出ました。
そのことをブルースマンとして成功してからも一時も忘れたことがなかったそうです。
東日本大震災の際も、原発の事故で人々が非難した後にはたくさんの飼い犬が残されていたそうです。
飼い主も、すぐ戻ってくるつもりだったのでしょう。
行政はいったんは被災犬を保護しましたが、ずっと保護し続けることはできず、かなりの犬が殺処分になりました。
大木氏は被災犬の噂を聞きつけて、出来る限りの犬を救い、その一部は現在セラピードッグとなっているそうです。
セラピードッグの活動は、米国では70年以上の歴史がありますが、各地でボランティア的に行われていました。
大木氏は米国在住中にこの活動を始めましたが、米国人に言われたそうです。
「あなたは日本人なんだから、日本で活動をしなさい。日本には、犬のアウシュビッツがあるじゃない。」
犬のアウシュビッツとは、殺処分される犬たちを窒息死させるために送り込むガス室のことです。
大木氏のHPに、ガス室に送られる直前の犬達の写真が小さく載っていました。
悲しそうな、諦めたかのような表情が、忘れられません。
大木氏はこの言葉をきっかけに日本に戻り、国際セラピードッグ協会を設立し、組織としてセラピードッグの活動を始めたのです。
セラピードッグとして認定されるには、心身の健康を取り戻した後、2年以上かけて45を超える教育プログラムをマスターしないといけません。
人間とアイコンタクトをとることによってその人の心身の状態を把握し、杖を突いている人や車いすの人など、人により歩くスピードを変えます。
寝たきりの人のベッドの上で添い寝をすることもあります。
「名犬チロリ」として名高い日本初の認定セラピー犬は、子犬を産んでゴミ捨て場に捨てられ、殺処分寸前で救助された足の不自由な雑種犬です。
それまでは、血統書付きの大型犬がセラピードッグに向いているとされていましたが、チロリは血統書犬をごぼう抜きにして全プログラムをマスターしました。
そんなチロリが、訓練中に震え上がって逃げ出してしまうことがありました。
それは、杖を突いている人に寄り添って歩く訓練という場面でした。
おそらくチロリの足が不自由なのは、棒のようなものでたたかれて虐待を受けていたからなのでしょう。
大木氏はチロリの恐怖心を取り除くため、かなり長い間チロリと杖と一緒に寝ていたそうです。
自分自身が辛い思いをし、人間の良い面だけでなく悪い面も熟知している犬の方が、現在辛い状況にある人間に真に寄り添うことができるのかもしれません。
チロリは亡くなる寸前までセラピードッグの活動を自らすすんで行いました。
チロリに助けられた人たちから、「これからもチロリに会いたい!」という声が上がったことにより、死後は銅像が建てられました。
映画や本にもなりました。教科書にも載せられました。
チロリがどれだけたくさんの人を救い、たくさんの人に愛されたのかということがわかります。
我が家の愛犬は、しつけもいいかげんで無駄吠えしますが、存在するだけでかわいくて仕方ありません。
存在自体が家族の癒しになっています。まさに我が家のセラピードッグです。
犬を飼っていない、癒しが必要な方の元へセラピードッグを派遣する。
なんて素晴らしいことでしょうか。
セラピードッグの活動の場がもっともっと広がっていくことを願ってやみません。
そして、犬の殺処分が0になり、すべての犬が人間と信頼関係で結ばれますように!
参照:国際セラピードッグ協会HP
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