決算前に、節税のために金券や消耗品を、大量に買いたいという相談を受けることがあります。
普段、消耗品は買った時に経費にしているので、決算前に大量に買っても経費に出来ると勘違いしてしまうのも無理はありません。
しかし、普段消耗品を買った時に経費にしているのは、一定の条件のもとに特別に認められているだけで、本来は貯蔵品という棚卸資産として、資産にした上で、使った部分を経費にしなければならないのです。
1.消耗品を買った時に経費に出来る条件
普段は、会社で消耗品を買った場合には、買った時に経費にしていると思います。
本来、貯蔵品として資産にしなければならない消耗品を、買った時に、まだ使っていなくても経費に出来る根拠は、以下の法人税法基本通達2-2-15というものになります。
消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する事業年度の損金の額に算入するのであるが、法人が事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。 (法人税法基本通達2-2-15)
言葉が難しいのですが、この中から、消耗品を買った時の経費に出来る条件の部分を抜き出すと次のようになります。
- 毎年一定量を買うもの
- 日常的に使うもの
- 毎年買った時の経費にしていること
上の3つの条件を全て満たしている場合のみ、特別に消耗品を買った時の経費に出来るというのが、法人税の世界のルールになります。
このように特別なルールが設けられているのは、日常的に使用する消耗品をいちいち資産にしたうえで、その使用をカウントして、使用した時に経費にするという方法は、会社の事務負担が大きくなってしまうことに配慮したものです。
消耗品であれば、なんでも買った時に自動的に経費に出来ると考えると、危ないですので注意しましょう。
2.決算前にまとめ買いした消耗品について
決算前に大量にまとめ買いした消耗品は、3つの条件のうち、「毎年一定量を買うもの」に該当しませんので、買った時の経費にはできず、原則通り、使った時の経費にすることになります。
消耗品を買った時の経費に出来るというのは、会社の事務処理負担の軽減のための特別ルールですので、事務処理負担と関係のない決算前の節税目的のまとめ買いにまで、特別ルールを適用してもらうことは出来ません。
決算前に消耗品をまとめ買いした場合のイメージを、数値と仕訳例でみてみましょう。
前提条件
- 決算日直前にコピー用紙を10万円分購入
- 決算日までにそのうち5000円分を使用
コピー用紙を買った時の仕訳
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
貯蔵品 | 100,000円 | 現金及び預金 | 100,000円 |
決算日の仕訳
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
消耗品費 | 5,000円 | 貯蔵品 | 5,000円 |
このように、10万円コピー用紙をまとめ買いしたとしても、当期の経費になるのは、実際に使った5,000円だけで、残りの95,000円は貯蔵品という棚卸資産となって、来期以降に実際に使った段階で経費になります。
なお、実際の経理処理の流れとしては、使用したコピー用紙の枚数をカウントするということではなく、決算日に残っているコピー用紙を数えて、その金額を貯蔵品にするという処理をすることが通常だと思います。その場合の仕訳は次のようになります。
コピー用紙を買った時の仕訳
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
消耗品費 | 100,000円 | 現金及び預金 | 100,000円 |
決算日の仕訳
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
貯蔵品 | 95,000円 | 消耗品費 | 95,000円 |
結果的に、どちらの経理処理方法でも、貯蔵品は95,000円、経費となる消耗品費は5,000円になります。
3.まとめ
普段消耗品を買った時に経費にしているのは、特別に認められた方法であって、原則的な方法ではありません。
節税目的で安易に消耗品をまとめ買いするのは、危険ですので、注意しましょう。
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