不動産売却時の収益認識方法

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 土地や建物のような不動産を会社で売却した場合には、その売却した不動産の帳簿上の価格である簿価と、売却金額との差額が会社の利益や損失になります。

 会社の利益の予想が赤字なので、利益を出すために不動産を売却したり、その反対で利益がたくさん出そうなので、この機会に含み損を抱えた不動産を損切りのための売却したりすることは良くある話です。

 このようなケースでは、不動産の売却による利益や損失が当期のものになるのか、来期のものになるのかは大きな問題になります。

 そこで、今回は、不動産を売却した場合の収益認識のタイミングを決める方法について、ご説明したいと思います。

1.収益認識方法の根拠

 収益認識の基本ルールは、実現主義といって、その収益が実現した時点の収益にするというものです。

 収益が実現した時点とは、ものの売買であれば、そのものの引き渡しがあった時点とされています。

 しかし、不動産の場合には、引き渡しがいつなのかというのは、不明確なケースもあります。

 そこで、法人税法基本通達2-1-14というルールで、次のように定められています。

 固定資産の譲渡に係る収益の額は、別に定めるものを除き、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入する。ただし、その固定資産が土地、建物その他これらに類する資産である場合において、法人が当該固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日において収益計上を行っているときは、当該効力発生の日は、その引渡しの日に近接する日に該当するものとして、法第22条の2第2項《収益の額》の規定を適用する。

 言葉が難しいですが、要するに、引き渡しの日に収益にするのが原則だけれども、土地や建物については、売却の契約をした日に収益にすることができるということです。

2.契約日または所有権移転登記日を選択

 土地や建物の売却については、売買契約日の収益にすることができます。

 また、原則的な方法である引き渡しの日の収益にすることもできますので、いずれかの日を選択することができます。

 なお、土地については、引き渡しの日というのがわかりにくいため、法人税法基本通達2-1-2というルールで、次のうちいずれか早いほうの日を引き渡しの日とすることができるとされています。

 (1)代金の相当部分(おおむね50%以上)を収受するに至った日

 (2)所有権移転登記の申請(その登記の申請に必要な書類の相手方への交付を含む。)をした日

 土地の売買の場合には、通常代金の全額を支払うと同時に、所有権移転登記の手続を行うことになります。そのために、銀行の応接室に売主・買主・銀行員・司法書士が全員集合して、その場で支払いと登記を完了されるようにします。

 余談ですが、不動産売買の際に、このような面倒な手続きをするのは、某大手企業のニュースで話題になった「地面師」のリスクを回避するためです。

 きちんとした仲介業者さんが仕切っていれば、問題ないと思いますが、個人間で仲介業者抜きで、売買するような場合には、できる限り、支払いと所有権移転登記が同時に行われるように注意しましょう。

売買契約日と所有権移転登記日のどちらを選ぶか

 土地や建物の売買の場合、売買契約日と所有権移転登記日(引き渡し日)の間には、ある程度の期間が空いてしまう場合があります。

 そして、収益認識の問題が生じるのは、売買契約日が当期で、所有権移転登記日が来期になるケースです。

 この場合には、土地や建物の売却の利益・損失を当期のものにしたい場合には、売買契約日の収益にし、来期の利益・損失にしたい場合には、所有権移転登記日の収益にしましょう。

 そんなことしてもいいのかと、疑問に思うかもしれませんが、土地や建物に限って認められている特別なルールになります。

 なお、あくまでも土地や建物に限ったものですので、車など他の固定資産や、通常の商品やサービスについて、契約の日の収益にすることは認められませんのでご注意ください。

まとめ

 土地や建物の売却の収益認識については、引き渡しの日を特定するのが難しいこともあり、売買契約日の収益にすることも認められています。

 土地や建物の場合、売買契約はしたものの、色々な手続きが手間取って、引き渡しが遅れてしまい、決算日までに間に合わないと焦ってしまうこともあります。

 そのような場合であっても、売買契約日の収益にすることはできます。

 土地や建物に限った、特殊なルールですが、覚えておくと便利だと思います。

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