エンジェル投資家

書評記事書評

 本書は、ウーバーに初期段階で投資していたことで、有名なエンジェル投資家であるジェイソン・カラカニスが、エンジェル投資家という「仕事」について、自らの経験に基づき解説するものです。

 日本では、投資家というといまだに、不労所得を得ようとするばくち打ちというイメージが強く、投資家という仕事について理解が進んでいませんが、本書を読んでいただくと、投資=不労所得というような、旧世代のステレオタイプな思考から脱却していただけるかもしれません。

 エンジェル投資家は、スタートアップのアーリーステージに資金を提供するハイリスク・ハイリターンの仕事です。そのため、一般的に運任せのばくちのようなものと認識されています。しかし、ジェイソン・カラカニスは、エンジェル投資という仕事のリスクを分析し、いかにリスクをコントロールして、リスクに見合ったリターンを得るかについて、自らの経験をベースに、わかりやすく説明しています。

 その中には、エンジェル投資家を目指そうという人の目的によっては、残念な意見もあります。

 例えば、エンジェル投資家として成功するためにはハードワークが必要だとか、リターンの効率としてはベンチャーキャピタリストの方がはるかに良いとか、さらにはエコシステムの完成されたシリコンバレーに住まなければ成功の可能性は低くなるなど、日本に住む日本人にとっては、元も子もないようなものもあります。

 一方で、エンジェル投資家を目指す目的が、不労所得を得ようというものではなく、エンジェル投資家という存在の社会的な意義に魅せられたといったものや、自分の適性を活かせる仕事の一つと捉えたからというものであれば、本書は大変参考になるのではないかと思います。

 もちろんエンジェル投資家を目指す方でなくても、事業経営をされている方であれば、誰にでも参考になるものですので、ご一読をお勧めいたします。

 

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