副業解禁で生じる問題について

副業スタッフコラム

 2018年1月に厚生労働省はモデル就業規則を改定し、遵守事項の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」及び懲戒の事由の「第11条に違反したとき」を削除し新たに第65条として副業・兼業について規定をしました

 そのため今までは一般的に原則として副業が禁止されていたものが、原則容認という180度方針が変更になっています。

モデル就業規則改定前

(遵守事項)

 第11条 労働者は、以下の事項を守らなければならない。

① 許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用しないこと。

② 職務に関連して自己の利益を図り、又は他より不当に金品を借用し、若しくは贈与を受ける等不正な行為を 行わないこと。

③ 勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れないこと。

④ 会社の名誉や信用を損なう行為をしないこと。

⑤ 在職中及び退職後においても、業務上知り得た会社、取引先等の機密を漏洩しないこと。 ⑥ 許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。

⑦ 酒気を帯びて就業しないこと。

⑧ その他労働者としてふさわしくない行為をしないこと。

(懲戒の事由)

第62条 労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。

①~⑥ (略)

⑦ 第11条、第13条、第14条に違反したとき。

⑧ (略)

 2 (略)

モデル就業規則改定後

(副業・兼業)

 第65条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

 2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。

3 第1項の業務が次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。

① 労務提供上の支障がある場合

② 企業秘密が漏洩する場合

③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合

④ 競業により、企業の利益を害する場合

働き改革により残業をさせることがしにくくなっており、その中で自社の社員が副業として他所で働いたり、反対に自社が他所の社員を雇い入れることも出てきます。

副業の方を雇った場合の雇い主の注意点

①給与として支払う場合も、業務委託として支払う場合も支払いを受けた方に確定申告してもらう必要があります。

 なお業務委託の場合は、その方の給与所得以外の所得が年20万円以下の場合は所得税の確定申告をしなくても大丈夫です。

②給料を支払った時は甲欄ではなく乙欄で給料の所得税を計算する必要があります。

 甲欄であれば月の給料が88,000円未満であれば所得税を徴収する必要がありませんが、乙欄の場合には88,000円未満の場合でも給料の額の3.063%の所得税を徴収する必要があります。

③労働時間は事業場を異なる場合でも、労働時間に関する規定の適用については通算されますので、1日の労働時間(本業の分と通算)が8時間を超えた場合は時間外労働として割増賃金を支払う必要があります。

 従って他所で働いている方がその日に他所で7時間働いた後に、3時間働いてもらった場合については3時間のうち最初の1時間は通算で8時間以内の為、通常の賃金でも大丈夫ですが、残りの2時間については時間外労働分として25%以上を加算した賃金を支払わなければなりません。その働いてもらっている時間が午後10時から午前5時の間である場合には深夜労働分として更に25%以上の賃金を支払わなければなりません。

 日によって本業で働いている時間が異なる場合には、時間外労働の時間も日によって異なりますので、その都度確認しなければならないなど割増賃金の管理が手間になります。

 また平日は本業で毎日8時間(週40時間)働いて、週末に副業として手伝ってもらう場合には週末の分は全額が割増賃金の対象となりますのでご注意ください。

 1,000円の時給の場合は、少なくても割り増し分については1,250円、深夜も絡む場合は1,500円支払わなければなりません。副業でない他の方との兼ね合いや、副業をしている方との合意で全部を1,000円で支払い割増賃金を支払っていなくても後から訴えられる危険もあります。

 なお労働時間の把握については困難であり、厚生労働省でも「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」をいうものを開催しており、そこでは労働時間の通算の廃止も検討されていますので今後取り扱いが変わるかもしれません。令和元年8月8日に上記検討会の報告書が厚生労働省のHPに記載されています。

④副業の場合には雇用保険には加入させなくても大丈夫ですが、社会保険は加入要件を満たしているのであれば、その方を社会保険に加入させなければなりません。

コメント