ここ数か月で耳にすることが多くなった老後に2000万円たりなくなるという問題。
発端は金融庁のワーキンググループが作成した報告書でした。
この報告書では現在の日本人の平均寿命、健康寿命、資産や収入と支出についてまとめられています。
そして話題になっているのが報告書の10ページ目にある高齢者夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)のグラフです。
このグラフには毎月のモデル収入とモデル支出がありその内訳は以下の通りです。
モデル収入 とモデル支出
- 勤め先収入 4,232
- 事業収入 4,045
- 社会保障給付 191,880
- その他の収入 9,041
- 計 209,198
- 食料 64,444
- 住居 13,656
- 水道光熱 19,267
- 家具・家事用品 9,405
- 被服・服物資 6,497
- 保険・医療 15,512
- 交通・通信 27,577
- 教育 15
- 教育・娯楽 25,077
- その他の消費支出 54,028
- 非消費支出 28,240
- 計 263,718
このモデルケースでの収入と支出の差額が月に54,520円あるので年間に654,240の不足となります。
そのため平均寿命から考えても20~30年では1300万円から2000万円が不足するといレポートの内容でした。
レポートの本質
このレポートの本質は最大で約2000万円の不足が発生することに対してどう対処するか、そのためには資産寿命(資産寿命とは生命寿命や健康寿命と関連して老後の生活を営んでいくにあたって、これまで形成してきた資産が尽きるまでの期間のことと定義している。
資産寿命が尽きたあとは年金等のフロー収入のみで生活を営んでいくことになる。)を伸ばしていきましょうと投資を促すことが最大の目的だったと思われます。
それがマスコミや政治ショーの影響で年金だけでは生活できないのか、年金で生活できないのは政権の失敗だという問題のすり替えが起こってしまったこと、作成したワーキンググループ側も投資の促進(メンバーに投資信託会社の社長やFP、日本証券業協会がいることから投資の促進を図りたいのは明白)を図りたいのに受け取ってもらうことができないうえに間違っているという烙印まで押されてしまったのだから当然、私たちの出した試算は間違っていないという反論をするのも当然と思われます。
ここでは老後に2000万円が必要という事実のみが大事でそれを年金(社会保障)のみで生活ができないのは政府がおかしい、年金がもらえないという不安をあおるのはとても残念でなりません。 さてこの報告書では2000万円の不足に対する対応策についても指南されています。
長期の分散投資
それは長期の分散投資です。 長期の分散投資は収益が安定し、実績値では損失を生み出すことなく運用できていたという結果も得られています。
その長期に行う分散投資について日本人のデータでは資産形成を行うべきである20~30代では老後には2000万円~3000万円の老後の備えとして十分な金融資産と自ら想定しているにもかかわらず預貯金のみの備えでまったくといっていいほど準備をしていないという現状を変えたいという金融庁の意思がありました。
そこでの提言は現役期では長生きの時代には老後の生活も満足するために資産形成を意識する そのために元本保証の預貯金とともに少額からでも長期の分散投資による資産形成を行う マネープランを検討するにあたり外部の助言者を見つけ、信頼できる金融サービス提供者とともに資産形成を行う。
リタイヤ後も長期で運用し判断能力の低下という避けられない状況を理解することで計画的に資産の取り崩しで健康的で満足度の高い生活を送るということが推奨されています。
一方、サービスを提供する金融機関にも提言を行っています。それは個人のニーズにそって徹底した顧客本位の運営を行うこと。情報の非対称性を理解してリスクの高い商品や手数料の説明を行うことと提言しています。 いま問題になっているかんぽ生命のことはまったく逆のことですね。
さらに現役世代は資産も負債も少ないが将来にわたって資産形成のニーズをもっていることからその特徴にあった商品やサービスを提供すること、また家計全体を俯瞰して総合的にコンサルティングすることとあります。
政府に対しても「IDECO」や「つみたてNISA」など長い期間で運用することを考えた商品には課税が免除されていることから運用者、金融機関、政府にとって三方良しになっているにも関わらず世間に大きく波及していないので今後一層の努力が必要という提言をしています。
まとめ
さてこの老後の2000万円問題を総括すると老後には2000万円が不足するという事態はどうやら本当のようだと認識したあとに二つの選択肢が生まれるのはいま起こっている状況から明らかです。
一つは政府の責任を追及し年金制度の拡充を訴えること そしてもう一つはこの提言にしたがって自分の資産形成を省みることです。
自分の行動で即効性のある効果が生まれるのはどちらであるかは明らかでしょう。 この問題を目の前にしたときに自分の暮らしをどう変えるかは自分自身でしかありません。
長期で分散投資はその名の通り時間がかかりますし、多くのことがらに目を通し決断していかなければなりません。それはとても根気のいることですが自分の生活をより良いものにしていくためには必要なものだと思います。
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