労働保険は、業種によって加入方法が変わります。
分かりにくい部分ですので、おおまかな仕組みを確認しておきましょう。
一元適用事業と二元適用事業
労働保険の事業には、業種によって「一元適用事業」と「二元適用事業」とがあります。
労働保険料と雇用保険料の申告・納付を一元的にまとめて行うのが「一元適用事業」、労働保険と雇用保険で別個に二元的に行うのが「二元適用事業」です。
「二元適用事業」は一般的に一部の港の港湾運送業、農林漁業畜産養蚕業、建設業等の業種で、それ以外の業種が「一元適用事業」になります。
一元適用事業は1枚の申告書で労災保険と雇用保険の申告を行うのに対し、二元適用の場合は労災保険の申告書と雇用保険の申告書は別の用紙です。
例えば、元請工事があり、事務員がいるような建設業の会社なら、工事の現場用の労災分、事務所の労災分、雇用保険の分の3種類の申告を行うことになります。
継続事業と有期事業
労働保険の事業は、継続事業と有期事業に分けられます。
建設業の工事のように期間が決まっている事業を「有期事業」、小売業や製造業のように事業の期間を予定せず継続的に行われる事業を「継続事業」といいます。
有期事業のうち「単独有期事業」は、工事ごとに労災保険料の申告・納付を行います。
これに対し、一定の要件を満たせば、複数の工事をまとめて年1回の申告で済ませることができるのが「一括有期事業」です。
労働者であれば全員が対象となる労働保険
労災保険には被保険者という概念はなく、パートも日雇労働者も、労働者であれば全員対象となります。
雇用保険は、国内の適用事業所で雇用され、雇用契約で定めた労働時間(所定労働時間)が週20時間以上で、31日以上継続して雇用されることが見込まれる場合は被保険者となります。
ただし、労働時間等が加入要件を満たしても、学生(夜間・通信を除く)は対象外です。
また、ダブルワ-クなど、他社で雇用保険に加入している場合は加入できません。
労働時間や日数などの基準を満たす人が対象となる社会保険
健康保険・厚生年金保険は、適用事業所の常勤役員(無報酬を除く)と正社員は全員被保険者となります。
パ-ト・アルバイトは週の所定労働時間と月の所定労働日数がどちらも正社員の4分の3以上であれば被保険者となります。
ただし、日雇労働者、2か月以内の期間雇用者、所在地が一定しない事業所に使用される者、4か月以内の季節的業務に使用される者、6か月以内の臨時的事業の事業所に使用される者は被保険者の対象から外されます。
これらの人についても一定期間を超えて使用されると被保険者となります。
社会保険の場合は、雇用保険とは異なり、昼間の学生であっても基準を満たせば被保険者となります。
また、他社で社会保険に加入していても、要件を満たせば被保険者となります。
特定適用事業所・任意特定事業所
「特定適用事業所」と「任意特定適用事業所」では、パート・アルバイトが社会保険に加入する範囲が一般の適用事業所よりも広くなっています。
「特定適用事業所」とは、健康保険・厚生年金保険の被保険者数(「短時間労働者」となる人を除く人数)が501人以上の企業等をいいます。
1年で6か月以上、企業単位で被保険者数が500人を超えることが見込まれる事業所が該当します。
「任意特定適用事業所」は、被保険者数が500人以下で、労使合意(従業員の2分の1以上と事業主とが合意)に基づき、申出をした企業等のことです。
任意特定適用事業所となった後は、適用に合意しなかった人も含め、「短時間労働者」の要件に該当するパ-ト等は全員、社会保険に加入することになります。
501人以上規模 特定適用事業所 加入義務のあるパ-トタイマ-等
①パ-トタイム労働者
②短時間労働者
500人以下規模 任意特定適用事業所(労使合意に基づき申出をした事業所)
加入義務のあるパ-トタイマ-等
- パ-トタイム労働者
- 短時間労働者
500人以下規模 適用事業所(任意特定適用事業所ではない事業所)
加入義務のあるパ-トタイマ-等 ①パ-トタイム労働者
短時間労働者
労働時間や労働日数が正社員の4分の3未満で、従来は社会保険の加入資格を満たさなかったパ-ト・アルバイトも要件をすべて満たす場合は「短時間労働者」として、健康保険・厚生年金保険に加入します。
要件(それぞれの要件をすべて満たす場合に加入義務あり)
パ-トタイム労働者
- 1週間の所定労働時間が正社員等の3/4以上
- 1カ月の所定労働日数が正社員等の3/4以上
短時間労働者
- 特定適用事業所または任意特定適用事業所で働いていること
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 給与が月8万8000円以上あること
- 雇用契約期間が1年以上見込まれること
- 昼間の学生でないここと
特別加入の保険料と給付
特別加入者の労働保険料は、一般の労働者のように実際に支払われた賃金額から算出するのではなく、3500円から2万5000円の範囲で特別加入者の所得水準に見合う額として事業主が選んだ給付基礎日額をもとに算出されます。
休業(補償)給付などの給付額も実際の賃金額ではなく、給付基礎日額によって算出される額となります。
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