節税のために車を買い替えるという中小企業の社長は多いのですが、実際には車の買い替えが節税になるかどうかは、ケースバイケースになります。
中小企業の社長には、車好きな方が多いので、新しい車に買い替えて節税になれば最高でしょうが、判断を間違えると、税金が大幅に増えることになりかねません。
車を買い替えるのが節税になるのかどうか、判断するための方法について、事例を踏まえてご説明していきたいと思います。
1.決算前に車を買い替え
不動産会社のK社長は、当期の始めに自社所有していた収益不動産を、以前から問い合わせのあった外国人投資家に良い条件で売却することができ、5000万円以上の臨時の利益がでたので、節税方法をあれこれ考えていました。
そして、K社長は数年前に、節税対策として、耐用年数を過ぎた中古の高級外車を800万円で購入したことを思い出し、今回も同じように高級外車を購入することにしました。
前回と同じ販売店で、耐用年数を過ぎた中古の高級外車を1000万円で購入することにし、今持っている中古の高級外車を下取りに出すことにしました。すると500万円で下取りしてもらえました。
2.利益が減るかはタイミングと車の簿価次第
今回の車の買い替えで、K社長の会社が当期に節税できるかどうかは、購入のタイミングと下取り(売却)に出した車の帳簿価格(売却時点までに減価償却で経費にした金額を引いた残り。略して簿価といいます)次第です。
K社長のケースでは、下取りに出した車は、耐用年数を過ぎた状態で数年前に購入したものですので、1円を残して減価償却が済んでいます。このため、下取りに出した車については、499万9999円が会社の利益になります。
一方で、購入した車については、耐用年数を過ぎた中古車ですので、12か月で1円を残して全額を減価償却することができます。
このため、納車月から期末月までが、6か月であれば500万円の減価償却費となり、1円だけ当期の経費が増えることになります。
つまり、納車月から期末月までが5か月以下の場合には、車の買替のせいで、当期の税金は増えてしまうことになります。
3.簿価の把握と売却する車の査定
車の買い替えで節税を考える際に、忘れがちなのが、下取り(売却)する今の車の方で、利益が出る可能性があるという点です。
下取り(売却)金額 ー 下取り(売却)する車の簿価 = 売却損益
上記の計算式で売却利益が計算できます。プラスの金額になると、売却益として、利益になります、マイナスの金額になると売却損として経費になります。
売却金額については、査定を取ってもらえば確認できます。また、簿価については、通常は決算書とセットになっている固定資産台帳(減価償却の明細)で確認することができますので、事前に確認しておきましょう。
4.なぜ車の買い替えで利益が減ると思ったのか?
車の買い替えで利益が減ると単純に考えてしまう要因として、以下のようなものがあります。
- 前述のように下取り車の売却益を忘れている
- 買った時よりも値段が下がっているので損になると思っている
- 下取りだと売却したという感覚が無い
中小企業経営者の場合には、買った値段と簿価の違いや、下取りの取り扱いなど、一般的な感覚では、勘違いしてしまうのは仕方ない面があります。
また、今回のような法人税等だけでなく、消費税の取り扱いにも大きな影響を与える可能性があります。
5.車の買い替えの際に気を付けるべき点
- 購入した車の減価償却費(納車のタイミング)
- 売却した車の売却損益(売却額と簿価との差額)
- 購入した車の消費税(当期の消費税の納税額減少)
- 売却した車の消費税(当期の消費税の納税額増加)
- 消費税の免税期間や簡易課税期間の場合の取り扱い
車のような高額なものを売買する場合には、想定外の税負担が生じる可能性がありますので、事前に顧問税理士に相談しておくほうが無難でしょう。
6.固定資産台帳で簿価を把握する
今回の車に限らず、減価償却している資産には、買った時の金額(取得価額)と減価償却で経費にした残りの金額(帳簿価額、簿価)があります。
買った時の金額の印象が強いと思いますが、売却したり、捨てたり、壊したりしたときの会社の利益に影響してくるのは、簿価の方ですので、固定資産台帳(減価償却資産明細)で、大まかな金額を把握しておくようにしましょう。
7.まとめ
節税のために車を買い替えようという場合には、購入した車・売却する車のそれぞれについて、帳簿価額や減価償却費、さらには消費税なども影響してきます。
複雑な問題になるので、専門家に事前に相談してから実施するのがベストでしょう。
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