収益の計上時期を決める実現主義について

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 売上をいつの売上にするのかについてを判断するためのルールを実現主義といいます。

 売上をいつの売上にしなければならないのかは、会社を経営していく上で、とても重要なテーマになりますので、今回は、この実現主義の考え方について、ご説明したいと思います。

1.実現主義の根拠

 実現主義の根拠は、次の法律の条文になります。

 資産の販売もしくは譲渡または役務の提供に係る収益の額は、別段の定めがあるものを除き、その資産の販売等に係る目的物の引き渡しまたは役務の提供の日の属する事業年度の所得の計算上、益金の額に算入する(法人税法第22条の2第1項)。

 言葉が難しくてわかりにくいですが、要するに、ものを売った場合は、そのものを「引き渡したとき」に売り上げになり、サービスや請負工事などの役務の場合は、そのサービス・工事が「完了したとき」に売り上げになるということです。

 この背景には、ものを引き渡したり、サービス・工事が完了すると、そのタイミングで、代金をもらう権利が確定するという考え方があります。このため、法人税の世界では、権利確定主義ともいいます。

 ただし、実際の売上には、ものを単純に売主から買主に引き渡したり、サービスや工事を売主が直接買主のために完成させるものばかりではなく、いろいろなパターンの売上があります。

 このため、以下のような条文が設けられています。

 資産の販売等に係る収益の額につき一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って当該資産の販売等に係る契約の効力が生ずる日その他の第1項に規定する日に近接する日の属する事業年度の確定決算において収益として経理した場合には、別段の定めがあるものを除き、当該事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する(法人税法第22条の2第2項)。

 またまた、難しい言葉ばかりですが、要するに、法人税法以外の一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従った範囲内であれば、そのルールに従った売上のタイミングの決め方ができるということです。

 それぞれの業界で、その業界ならではの売上のタイミングの決め方がありますので、その方法が、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準と矛盾していなければ、その方法で大丈夫ということで、実現主義に幅を持たせてあります。

2.実現主義の例

(1)ものの販売の場合

 ものの販売の場合は、そのものを引き渡したときに売り上げにするということになります。しかし、いつ引き渡したのかについては、色々なパターンがあります。

 通信販売であれば、商品を出荷したときなのか、商品が相手に届いたときなのか迷うところです。

 船荷で輸出するような場合であれば、船積みをした日なのか、相手が受け取った日なのか迷うでしょう。

 大型の機械のように、商品を渡すだけでなく、据え付け工事や試運転まで必要なものであれば、商品を渡した日なのか、相手が実際使えるようになってOKを出した日なのか迷うところです。

 実現主義には幅が設けられていますので、その引き渡したものの種類及び性質、契約の内容等に応じて、引渡しの日として合理的であると認められる日の決め方を会社で決定し、その方法を継続して使っていれば問題ありません。

 継続して使うのが条件ですので、今年は相手からOK貰った日に売り上げにして、来年は引き渡した日にするというように、ころころと変えることはできませんので注意が必要です。

(2)サービスの場合

 ものの販売と違って、サービスの場合には、ここからここまでが、このサービスで、ここからここは別のサービスと、目に見えるわけではありませんので、原則として、個々の契約の内容によって、売り上げにする日を判断することになります。

 サービスや工事の仕事の場合には、当期の売上はどこまでかということが、あいまいで、税務調査で争いになる可能性がありますので、必ず契約書を作成するようにしましょう。口約束で仕事をしてしまうと、税務調査だけでなく、その仕事の代金回収などでも困ったことになるおそれがあります。

3.まとめ

 売上のタイミングは、実現主義という考え方で判断します。

 実現主義を実際の仕事に当てはめる場合には、そのままでは当てはめられないケースも多いことから、ある程度の幅が設けられています。

 会社で事業を続けていると、様々なパターンの取引が出てきて、どのタイミングで売り上げにするか難しい場合もありますが、その際は、実現主義の考え方をベースに、個々の取引の流れや契約の内容などから、どこの段階で実現したといえるのかを判断し、ルールを決めて、継続的に使用しましょう。

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