中小企業では、節税のために中古車の買替をするケースは、結構多いのですが、その際に利益と税金にどの程度の影響があるのかは、簡単に計算できません。
また、実際買替を行った場合には、経理処理のための仕訳は、複雑で難しいものになります。
そこで、今回は、具体的な数値例を使って、利益と税金への影響額の計算方法と、経理処理のための仕訳の方法をご説明したいと思います。
数値例の前提条件
- 対象期間は2019年1月~12月の決算期(12月決算法人)
- 中古車の購入と下取は、2019年10月15日に即日引渡しと代金支払を実施
- 購入する車の価格は540万円(消費税8%含む)
- 購入する車の初度登録は2012年3月
- 購入する車は排気量2000㏄の普通乗用車
- 下取車は、2015年6月に購入した中古車
- 下取車の初度登録は2007年4月
- 下取車は排気量2500㏄の普通乗用車
- 下取価格は162万円(消費税8%含む)
中古車買替の仕訳
買替日(2019年10月15日)に発生する仕訳
中古車購入の仕訳
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
車両運搬具 | 5,000,000円 | 現金及び預金 | 5,400,000円 |
仮払消費税 | 400,000円 |
下取の仕訳
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
現金及び預金 | 1,620,000円 | 車両運搬具 | 1円 |
固定資産売却益 | 1,499,999円 | ||
仮受消費税 | 120,000円 |
仕訳の補足説明
- 買替の仕訳は、中古車購入の仕訳と下取の仕訳を合体させて入力することもできます。
- 現金及び預金は、540万円支払って、162万戻ってきて、結果的に378万円を支払った形になって、実際のお金の動きと一致します。
- 消費税の仕訳については、税抜経理の場合の方法になります。税込経理の場合には、仮払消費税の40万円は購入した車両運搬具の500万円に加え、仮受消費税の12万円は固定資産売却益の149万9999円に加えます。
決算時(2019年12月31日)の仕訳
減価償却費の仕訳
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
減価償却費 | 1,250,000円 | 車両運搬具 | 1,250,000円 |
- 減価償却の金額は10月から12月の3か月分の月割計算
- 500万×100%×3/12=125万円
消費税の仕訳
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
仮受消費税 | 120,000円 | 仮払消費税 | 400,000円 |
未払消費税 | 280,000円 |
- 左下の未払消費税28万円は、決算の後で支払う消費税を、その分だけ減らすことになります。
- 消費税の支払は、車の買替以外の全ての消費税のかかる取引を集計して計算します。
利益への影響額
固定資産売却益 | 1,499,999円 | 利益増加 |
減価償却費 | 1,250,000円 | 利益減少 |
差引 | 249,999円 | 利益増加 |
- 節税のための車の買替でしたが、利益は249,999円増加してしまいました。
税金への影響額
法人税等への影響額
利益の増加額 | 249,999円 |
法人税等の税率(概算) | 35% |
法人税等の増加額 | 87,500円 |
- 利益の増加によって、法人税等の金額は増えてしまいました。
消費税への影響額
消費税の仕訳のところでご説明したように、2019年1月~12月の決算で支払う消費税の金額は、買替をしなかった場合と比べて、28万円減少します。
車の引渡しを受けた月を変化させた場合の法人税等への影響額
引渡し月 | 固定資産売却益 | 減価償却費 | 利益の増減 | 法人税等の増減 |
2019年12月 | 1,499,999円 | 416,666円 | 1,083,333円 | 379,167円 |
2019年11月 | 1,499,999円 | 833,333円 | 666,666円 | 233,333円 |
2019年10月 | 1,499,999円 | 1,250,000円 | 249,999円 | 87,500円 |
2019年9月 | 1,499,999円 | 1,666,666円 | ▲166,667円 | ▲58,333円 |
2019年8月 | 1,499,999円 | 2,083,333円 | ▲583,334円 | ▲204,167円 |
2019年7月 | 1,499,999円 | 2,500,000円 | ▲1,000,001円 | ▲350,000円 |
2019年6月 | 1,499,999円 | 2,916,666円 | ▲1,416,667円 | ▲495,833円 |
2019年5月 | 1,499,999円 | 3,333,333円 | ▲1,833,334円 | ▲641,667円 |
2019年4月 | 1,499,999円 | 3,750,000円 | ▲2,250,001円 | ▲787,500円 |
2019年3月 | 1,499,999円 | 4,166,666円 | ▲2,666,667円 | ▲933,333円 |
2019年2月 | 1,499,999円 | 4,583,333円 | ▲3,083,334円 | ▲1,079,167円 |
2019年1月 | 1,499,999円 | 5,000,000円 | ▲3,500,001円 | ▲1,225,000円 |
- この表のように、買替の実施時期が早ければ早いほど、法人税等を減らす節税効果が高くなります。
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