仕掛工事の計算方法と毎月計算するメリット

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 請負工事の仕事の場合には、棚卸資産(在庫)という意識のない経営者の相談をときどき受けることがあります。

 特に大量の材料を自前で仕入れて使ったりということが無いと、棚卸資産の金額によって利益の金額が大きく変わってしまう可能性を考えていない場合が多いと思います。

 しかし、棚卸資産は材料のように目に見えるものだけではなく、外注先や従業員の皆さんの作業の成果も仕掛工事という棚卸資産になってきます。

 今回は、請負工事の仕事の会社で、ついつい忘れがちな仕掛工事の計算方法と、毎月計算することのメリットについてご説明したいと思います。

1.棚卸資産なんて無いと思っていた社長

 外構工事会社のH社長は、税理士を変更して初年度の決算を迎えていました。決算期末月の月次試算表が出来上がり、決算調整になった段階で、税理士事務所の担当者が「棚卸資産の明細を作ってください」と言ってきました。

 いままでの税理士にそんなことを言われたことが無かったので、H社長は面倒だと思い、「うちの仕事で棚卸資産なんてあるわけないだろう!」と、税理士事務所の担当者を怒鳴りつけました。

 すると税理士事務所の所長から、「棚卸資産の明細を出してもらえないのでは、決算は出来ませんので、顧問契約を解除します」と言われ、慌てて税理士事務所の担当者に謝って、棚卸資産の明細の作り方を教えてもらうことになりました。

2.仕掛工事という棚卸資産

 商品を販売するわけではない仕事だと、棚卸資産について考えることはあまりないかもしれません。しかし、どのような仕事でも、棚卸資産が生じる可能性はあります。

 H社長の会社のように、請負工事であっても、決算日時点で工事途中の未完成工事(仕掛工事)に、決算日までの間に係った費用は、棚卸資産として、会社の経費ではなく、資産として経理処理しなければなりません。

3.仕掛工事の拾い出し

 日頃から現場台帳を作成している場合には、仕掛工事は自動的に計算されています。しかし、普段は現場台帳を作成せず、決算の時だけ仕掛工事にかかった費用を計算しようとする場合には、 まずは、仕掛工事の現場を拾い出していかなければなりません。

 決算日前に工事が始まっているが、決算日までに工事が終わっていない現場のリストを作成したら、次は、その現場で決算日までに使った材料、外注費、給料などの金額を計算して集計していきます。請求書の明細や、出面帳(出勤簿)などを見ながら集計していくことになります。

4.なぜ棚卸資産なんて無いと思ったのか?

 H社長が、棚卸資産なんて無いと思った要因としては、次のようなものが考えられます。

  • 棚卸資産というのは、商品や材料の倉庫がある会社だけのものだと思った
  • 棚卸資産の計算なんかしても、税金が増えるだけで意味がないので考えたくない
  • 外注費や給料のような目に見えないものに、棚卸資産というイメージがわかない

 確かに、材料費はまだわかるが、外注費や給料などが棚卸資産になるというのは、イメージしづらいと思いますので、H社長のような人は珍しくありません。

 会計上の費用と資産の関係になるので、簿記の勉強をしたことのある人でないと、難しい考え方かなと思います。

5.仕掛工事の中身

 棚卸資産である仕掛工事には、①材料費、②外注費、③労務費(給料など)、④経費といったもののうち、その工事現場に直接かかったものを集計します。

 こうしたものは、通常は請求書が来た段階で、費用として経理処理しますが、会計上も税務上も実際に費用になるのは、工事が完成して相手に引き渡したとき(=売上になったとき)になります。

こ のため、売上になるまでの間は、費用ではなく棚卸資産という資産にしておき、売上になったときに、資産から費用に振り替えるという、経理処理を行うことになります。

6.仕掛工事を毎月計算するメリット

 仕掛工事を決算の時だけ計算する方法は、普段の経理処理は楽ですが、大きなデメリットがあります。それは、毎月の月次試算表の利益が、実際の利益の金額と実際の仕掛工事の金額分だけずれてしまうことです。

 大きな現場が月をまたいだような場合には、費用だけは大きく出ているが、売り上げは上がっていないという状態になり、月次試算表の利益は赤字になっているが、実際は大きな黒字が出ているといったことになり、利益の予測が立たなくなってしまいます。

 建設業の会社の場合には、現場台帳を毎月作成して、仕掛工事の金額を常に計算して、現場ごとの利益を毎月確認しているかどうかで、経営成績に大きな差がついてきます。建設業の会社で、現場台帳を毎月作成していないようであれば、早急に顧問税理士等の専門家に相談して、現場台帳を作成する仕組みを作りましょう。

 ちなみに、 システム受託開発や受託研究、コンサルタント業務受託などを事業としている会社も、建設業と同様に、各プロジェクト毎の台帳を作成して、仕掛の金額と、プロジェクト毎の利益の確認が必要になります。

7.まとめ

 請負工事の仕事をしている会社では、目に見えない「仕掛工事」という棚卸資産があって、その金額によって、利益の金額が変わってきます。

 仕掛工事の金額は、決算の時に年1回だけ計算する会社も多いですが、仕掛工事の金額によって、利益の金額が大きく変わってきますので、現場台帳を毎月作って、仕掛工事の金額を毎月計算するのが良いでしょう。

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