人気ブログからスタートしたこの本は、ビジネスにおける人間を「天才」「秀才」「凡人」に区分することで、その才能の内容を分析し、それぞれの才能の活かし方、活かす場所を示そうとしているように思えます。
身の回りに天才がいない多くの人にとって、あまり関係のない話のようですが、実際には、一人一人の中に、天才・秀才・凡人の要素がミックスされているので、それぞれの要素を分解して理解することは、自分を知る上でも、周りの人たちを理解する上でも、有益ではないかと思います。
相互理解によって、コミュニケーションの断絶が解消されれば、潜在的に発生している社会的な損失が、かなり削減されるかもしれません。
創造性・再現性・共感性
天才・秀才・凡人が物事を評価する際の軸が、それぞれ創造性・再現性・共感性であるというのは、すっと入ってくる部分ではないかと思います。
この評価軸の違いは、個人間のコミュニケーションの断絶につながるだけでなく、企業組織のありようも変えていくことになります。
創造性を軸とする天才の時代から始まり、再現性を軸とする秀才の時代への移行していく様子は、大小問わず様々な企業でみられるものです。大企業病の原因でもあり、上場した企業が非上場化する原因でもあるでしょう。
企業経営でいえば、外部環境との関係で、創造性が優先される時期と再現性が優先される時期が変わってくるので、特に変化の激しい環境下では、天才かつ秀才でなければ成長を続けるのは難しそうです。
普通の企業では、天才創業者から秀才後継者への引継ぎで、創業者が撒いた種を後継者が大きく育てるパターンが多いですが、必要なタイミングで必要な才能にバトンタッチできる組織が理想ですね。
ただ、一度数値管理が絶対の環境になってしまうと、そこから創造性を活かすのは、難しくなるので、それこそ非上場化であったり、別会社化のような大掛かりなことが必要なケースも多くなるでしょう。
才能と武器
才能を活かすためには、相性のいい武器を持つことが必要であるとして、創造性・再現性・共感性の3つの才能それぞれに相性のいい武器を選び、鍛えていく必要があると指摘しています。
そして、武器そのものの性能だけでなく、タイミングによって適切な武器を選択することで、世の中が認知できる成果につながるとしています。
自分に合った武器を選び、鍛え、適切なタイミングで適切な武器を使いこなす能力を、経験を積んで身に着けていくというのが、成果を上げる方法ということでしょう。
私も含めて、たいていの人は、漠然とこのような意識をもって日々過ごしていると思いますが、このように明確に言語化して整理してもらえると、改善すべき点や進むべき方向性を考える上で、非常に有益ですので、ありがたいことです。
頭の良い人の本を読んだり、話をしたりすると、ぼんやりしていて、正しい方向に進んでいるのか、何か漏れているのではないかというような気持ち悪さが解消できて、気持ちが良いものです。
まとめ
才能を殺されている「天才」をスタートアップに導くインフラ構築を目指している著者の本ではありますが、組織の大小問わず、組織とそのメンバーを理解し、コミュニケーションの断絶解消を考えるためには、非常に有益だと思います。
経営者の方には、組織を考えるうえで、今までに無い視点が得られるのではないかと思いますので、特にお勧めします。
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