サブスクリプションについては、マスコミでも「サブスク」という言葉が、普通に聞かれるようになってきました。消費者の視点からは「サブスク」は、定額料金制サービスということで、所有と利用のどちらがお得かというレベルの話になりますが、ビジネスモデルとしてのサブスクリプションは、非常に奥深いものになります。
構成
全15章が、第1章から第8章までの第一部と第9章から第15章までの第二部に分かれています。
第一部は、サブスクリプション・エコノミーの到来ということで、まず、第1章でサブスクリプションの根本にある、製品中心から顧客中心への変化、別の言葉でいえば、製品起点から顧客起点への変化について説明しています。
その上で、第2章~第8章では、衰退産業とみなされている様々な産業が、サブスクリプションによって、どのように再生・発展するかを通じて、サブスクリプションの考え方について、より理解を深められるような構成になっています。
第二部は、サブスクリプション・モデルで成功をつかむということで、サブスクリプション・モデルを取り入れていく上で、組織・商品開発・マーケティング・営業・ファイナンス・IT・文化といった要素が、従来の考え方からどのように変化するかを説明しています。
サブスクリプション化できるか?
本書の第一部を経営者目線で読んでいくと、自社の事業でサブスクリプション化できる部分は無いか、定額料金制だとしても、サブスクリプション・モデルのメリットを生かせているのかどうか、事例を追いながら考えられるので、非常に有意義だと思います。
事例の企業自体は、マスコミでも取り上げられるようになってきていますが、経営者目線での深堀りがされることは、中々ありませんので、本書を通じて、様々な業種のサブスクリプション・モデル事例を追ってみると理解が深まるかと思います。
永遠のベータ版
東京ディズニーリゾートが、2020年に向けて「ここは、永遠に完成しない場所。」というキャッチコピーを打ち出していますが、これは、まさにサブスクリプション化の流れを強く意識したものだと考えられます。
ディズニーリゾートは、これまでもリアルな顧客行動を、スピーディーにユーザーエクスべリエンスの改善につなげることで、圧倒的な競争優位を築いてきています。
これは、一度作ったらそれを回していって、陳腐化したら更新するという従来のテーマパークと一線を画すものでしたが、近年では競合も高速でユーザーエクスペリエンスを改善し、キャッチアップしてきていることもあり、改めて、サブスクリプション・モデルの徹底を図るという宣言のように思われます。
本書では、Gメールやネットフリックスの例が挙げられていますが「永遠のベータ版」という意識は、あらゆる業界、企業にとって、とても重要なものだと思います。
サブスクリプション化する世界では、ユーザーエクスペリエンスの改善をいかに高速で回し続けられるかの競争になります。速度と持続力を組織として確保できるかどうかが、企業存続の命運を分けることになりますので、常に意識が必要でしょう。
マーケティング・営業
マーケティングや営業も、サブスクリプション化によって、大幅に変化してくる部分になります。基本的な構造は、昔からの営業の考え方と共通する部分が多いものの、その実行のインフラがネット上になったことにより、より高速にプロセスを回していくことが必要になるため、それに耐えられる組織作りというのは、従来の発想では不可能でしょう。
また、1対1の関係をベースとした活動に変わっていくという点は、大企業にとっては、大きな影響があるかもしれません。一方で、中小企業にとっては、ビジネスチャンスになる部分ですので、このチャンスをしっかりとつかめる中小企業による、下克上が増えていきそうな予感があります。
ファイナンス
自分の専門領域でもあるため、ファイナンスの部分は特に興味深かったです。年間定期収益の考え方は、従来からお客様へのアドバイスで利用していましたが、成長コストの部分には触れないケースが多いです。今後は、成長を意識した経営が、企業の存続に必要になってくるかもしれませんので、重視していくべきかもしれません。
まとめ
サブスクリプション化を意識しながら、自社の様々な機能を見直してみると、新しい視点から、今までにない発想が得られると思います。
是非本書を読んで、サブスクリプション化の考え方を、物の見方の一つに加えていただきたいと思いました。
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