IT業界の話がメインの書籍ではありますが、私のバックグラウンドが非ITなもので、非IT視点でのレビューになります。非ITな私にとっても、今後の事業展開を考えるうえで、とても参考になる内容ですので、経営者の皆様に是非お勧めしたいと思います。
アフターデジタル
日本国内では、2019年現在ではまだ現実のものとはなっていないものの、中国で進んできているのが、全てがデジタル世界に含まれるという共通認識をベースとした企業経営です。
こうした共通認識がいまだに日本国内で広まっていないことに危機感を覚える著者が、この共通認識を広めるために造語したのが「アフターデジタル」という言葉です。
本書では、アフターデジタル時代における成功企業に共通する「OMO(Online Merges with Offline)」という概念について、中国平安保険やビットオート、アリババといった中国の成功企業の実例を使って、解説しています。
OMO
OMOは、オンラインとオフラインが融合した社会のことを言いますが、本書ではこれを、「オンラインとオフラインを融合し一体のものとして捉えた上で、これをオンラインにおける戦い方や競争原理と考えるデジタル成功企業の思考法」として展開しています。
一見すると、IT企業のためだけのものに思えるかもしれませんが、非IT企業であっても、OMOの認識を持った上で、どのように自社の強みを生かしていく仕組みを構築していくかという視点は非常に重要なものになります。
OMOをベースには、徹底した「ユーザー起点の思考法」があることも重要なポイントでしょう。ここを認識していないと、現在起こっている現象の意味を見誤ってしまいます。
プロダクトとUXの高速改善
OMOをベースにした経営は、データを入手し、そのデータを使ってプロダクトをUXを高速改善し、またデータを入手するというサイクルの競争になります。
プラットフォーマーがこのような競争を展開することになりますが、この競争はオンライン上だけでなくオフラインでも展開されることになります。
アフターデジタル世界では、オンラインとオフラインの区別はありませんので、データを入手するために必要であれば、オンラインと同じようにオフラインも利用することになるということです。
これも、非IT企業には関係なさそうな話ですが、こうした競争によって変化していく環境の下で、どのように事業展開していくかを、今のうちから考えて、準備をしておくか否かは、企業の命運を分けるかもしれません。
オンラインをベースと考えて、オフラインのリアル接点をどう生かして、優れたプロダクトとUXを実現し、改善し続けていくかという視点は、非IT企業にとっても、非常に重要なものでしょう。
企業に求められる変革
中国の先進企業の事例を通じた説明が続き、日本企業の絶望的な遅れにショックを受けると思いますが、最後の第4章ではアフターデジタルを見据えた日本式ビジネス変革ということで、どのような変革を行っていくべきかを整理しています。
ものづくり型から体験寄り添い型への変革が必要になりますが、これを①全社戦略、②事業戦略、③ビジネスモデルのレイヤーに分けて、説明してありますので、自社の事業の変革を考える際に、とても参考になるかと思います。
まとめ
IT用語とマーケティング用語が多いので、一見するとスタートアップやマーケター向けの書籍のように思われるかもしれませんが、非IT企業の経営者にこそ、是非読んでもらいたいです。
漠然とアフターデジタルの世界を恐れたり、目を逸らしたりしている経営者にとって、現実をしっかりと見据えて、今から準備していくための指針が得られると思います。
方向性を間違えなければ、貴社のアセットはいままで以上に活かせるでしょう。
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