電子帳簿保存法の承認手続の方法と制度の趣旨

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法人税法の改正で、青色欠損金の繰越控除の期限が10年に延長され、その影響で、総勘定元帳や仕訳帳などの書類の保存期間も10年に延長されました。

書類の保存期間が延長されると問題になるのは、書類の保存スペースです。

法人税法や消費税法では、原則として書類の保存は紙ベースで行うことになっていますので、書類の保存スペースの問題は切実なものになってきました。

書類を省スペースで保存するために、有効な方法の一つが、電子帳簿保存法の承認申請をして、電子データの状態で、書類を保存する方法です。

今回は、総勘定元帳や仕訳帳など、財務会計システムで作成する帳簿についての、電子帳簿保存法の承認申請の手続きについて、ご説明したいと思います。

1.電子帳簿の承認申請手続

紙ベースでの保存が原則の書類について、電子データで保存するためには、事前に承認申請を税務署にしておくことが必要です。

具体的には、「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請書」を作成して、電子データでの保存を始める3か月前までに税務署に提出しなければなりません。

つまり、2020年4月1日にスタートする決算期から、電子帳簿保存をスタートするためには、2019年中に承認申請書を提出することになります。

承認申請書は、次の添付書類をセットにして、提出します。

  •  財務会計システムの概要を記載した書類
  •  経理事務手続の概要を明らかにした書類(経理処理を他の者に委託している場合には、その委託に係る契約書の写し)
  •  申請書の記載事項を補完するために必要となる書類その他参考となるべき書類

これらの添付書類については、それぞれの財務会計システムのベンダーにひな形を用意してもらいましょう。

2.承認申請手続の制度趣旨

そもそも電子データで作成している書類を、紙ベースでの保存が原則だからと言って、電子データで保存するために、面倒な承認申請手続を設けているのは一見不合理です。

しかし、保存対象のデータが、税金の金額を決める証拠資料であるという重要性から、一定のハードルが設けられているのです。その背景には、「コンピュータ処理は、痕跡を残さず記録の遡及訂正をすることが容易である、肉眼でみるためには出力装置が必要であるなどの特性を有することから、適正公平な課税の確保に必要な条件整備を行うことが不可欠」という政府税制調査会の答申で示された考え方があります。

財務会計システムで作成される帳簿は、税金の金額を決める証拠資料としての能力を持っている一方で、財務会計システムの内容によっては、過去にさかのぼって、何の痕跡も残さず、こっそりと書き換えることができてしまいます。

このため、承認申請手続きの中で、帳簿を作成するために、使用する財務会計システムが、そのような書き換えのできないものであることを、確認しないといけないのです。

ちなみに、このように電子帳簿保存に対応した財務会計システムは、過去の修正ができないと勘違いしている、中小企業の経営者や経理担当者が多いのですが、実際には、過去の修正ができないのではなく、痕跡を残さずに修正ができないだけですので、どのような財務会計システムでも過去データの修正はできます(修正できないと財務会計システムとしての機能をそもそも果たせません)。

言葉だけではわかりにくいので、実際の仕訳で見てみましょう。

痕跡を残さず修正するパターン

2月28日の仕訳(間違い)

日付借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
2月28日
現金及び預金10,000円売上高10,000円

3月1日の仕訳(修正)

日付借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
2月28日現金及び預金5,000円売上高5,000円

仕訳の金額だけを書き換えてしまうので、修正した痕跡は残らない。経理担当者が好きに金額を書き換えられるので、不正の危険性も高い。

修正の痕跡が残るパターン

2月28日の仕訳(間違い)

日付借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
2月28日
現金及び預金10,000円売上高10,000円

3月1日の仕訳(修正)

日付借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
3月1日現金及び預金-10,000円売上高-10,000円
3月1日現金及び預金5,000円売上高5,000円

2月28日の仕訳をマイナス金額で取り消しをしたうえで、正しい仕訳を改めて入力するので、何を修正したのかが後から見てもわかる。

電子帳簿保存をするためには、このような財務会計システムの利用が必須ですが、電子帳簿保存のためだけでなく、修正の痕跡が残る財務会計システムを利用した方が、不正への対応など会社のリスク管理のためにも望ましいでしょう。

3.まとめ

電子帳簿保存法の承認申請を利用すると、今まで、分厚い冊子数冊になっていた総勘定元帳や仕訳帳が、DVD1枚になり、10年間の保存期間を考えると、かなりの保存スペースの節約になるでしょう。

承認申請手続きは、面倒なようですが、基本的には1回申請すれば、その後は特に手続きは不要ですので、積極的なご利用をお勧めします。

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