中小企業経営者にとってのみなし配当のリスクついて

経営管理記事経営管理

 中小企業経営者にとって、知らないうちに大きな税負担を負ってしまうリスクが色々とあります。

 今回はそうしたリスクの一つである「みなし配当」について、基本的な考え方をご説明したいと思います。

1.みなし配当とは

 みなし配当は、会社の株主が、様々な理由で、会社からお金やその他の財産を受け取った場合に、その金額が会社の資本金等の額に相当する部分を超えた部分があると、その部分が配当としてみなされて、配当所得として所得税を課税されることになるものをいいます。

 つまり、配当をしたわけではないのに、配当とみなされて課税されるという意味で、みなし配当と呼ばれています。

 みなし配当を生じる様々な理由には、会社の合併などの組織再編も含まれますが、中小企業の場合に良くあるのは、会社による自己株式の取得や、資本金等を減らすための資本の払い戻しになります。

 自己株式の取得は、株主からすると会社に株式を売った売却代金なので、株式の譲渡所得になると考えがちですが、実際には、株式の譲渡所得部分とみなし配当部分が混ざった状態であり、所得税の扱いはそれぞれで全く異なることになります。

 資本の払い戻しについては、当初払い込んだ資本金から増えた部分については、累積した利益の配当とイメージしやすいとは思いますが、こちらも、みなし配当の部分が含まれ所得税の課税対象になります。

2.みなし配当の金額

 自己株式の取得のケースを例に、みなし配当の金額をどのように計算するのかご説明したいと思います。実際の計算は、非常に難しいので専門家に依頼していただくことが必要ですが、大まかなイメージをつかんでおくと、経営判断の際の参考になるでしょう。

 前提条件

  • 株式の当初の取得価額(出資金額) 1000万円
  • 上記のうち会社が自己株式として取得する部分 300万円分(30%)
  • 資本金等の金額 1200万円
  • 自己株式の取得対価 500万円

 この場合、300万円で取得した株式を500万円で会社に売ったので、差額の200万円が株式譲渡所得になり20%の所得税・住民税がかかると考えがちです。

 しかし、自己株式の取得の場合には、通常の株式売買と異なり、みなし配当の部分と株式譲渡所得の部分を区分することが必要です。

 具体的には次のように計算します。

株式譲渡所得部分=1200万円×30%-300万円=60万円

みなし配当部分=500万円ー1200万円×30%=140万円

 株式譲渡所得部分にかかるのは、20%の所得税・住民税ですが、みなし配当部分は総合課税となり所得税の最高税率45%と住民税10%の最高で合計55%になってしまいますので、税負担が全く変わってきてしまいます。

3.まとめ

 自己株式の取得や資本の払い戻しなど、会社から株式に関してお金やその他の財産を受け取る場合には、みなし配当の可能性があることを頭の片隅に入れておいてください。

 みなし配当は総合課税になり、思いのほか高額の税金が課税される可能性がありますので、注意が必要です。

コメント