中小企業の場合、通常は配当をしても、会社にもオーナー社長にも何もメリットはないので、ほとんどの配当をしている会社はありません。
しかし、極めてまれに配当をしている中小企業も存在します。
今回は、そうした中小企業はどうしてわざわざ配当をしているのか、事例をご紹介したいと思います。
1.従業員持ち株会を作っている場合
中小企業が配当をするケースとしては、従業員持ち株会を作っている場合が挙げられます。
中小企業のほとんどは、オーナー経営で、所有と経営が一体なのですが、極まれに、オーナー社長ではなく、従業員から生え抜きの社長が、代々交代で務めている会社もあります。
このような会社では、社長が株式のほとんどを持つようにすると、次の社長交代の時に、株式を現社長から次期社長に譲渡しなければならないのですが、その場合、株式の譲渡代金を次期社長が個人で調達しなければならず、現実的には困難です。
そこで、従業員が少しずつ株式を持ち合い、合議制で社長をはじめとする役員を決めていくことが必要になります。
こうした従業員持ち株会は、上場企業やスタートアップであれば、株価の上昇によるキャピタルゲインの期待もありますが、中小企業の場合には、株式を市場で売却できませんので、従業員に出資してもらうためのインセンティブが必要になります。
そこで、一定の割合の配当を支払うことで、売却できな非上場株式を従業員に買ってもらうのです。株価の10%程度の配当をもらえれば、10年勤続すると元本がほぼ回収できて、退職時には出資額で買い取ってもらえるので、会社が倒産しないのであれば、悪くない条件になるでしょう。
2.持株会社を使っている場合
中小企業の中でも、業績が継続的に良く、株式の相続税評価額がとても高くなっているケースでは、相続税対策のために、持株会社を作って、オーナー社長の生前に株式を実質的に次期社長に移しておくこともあります。
具体的には、次期社長が出資して持株会社を作り、その持株会社が会社の株式を買い取ることで、結果的に、次期社長が会社を支配できるようにするというものです。
この場合には、持株会社はオーナー社長から株式を買い取る資金を用意しなければなりませんが、このようなスキームを実施するのは、株価がとても高くなってしまった場合ですので、自己資金で用意できるケースはあまりありません。
そこで、持株会社では、株式の買い取り資金を、通常は銀行から借り入れることになります。
しかし、持株会社は株式を持っているだけなので、銀行借入を返済していく資金がありません。
そこで、配当を支払うことで、持株会社に返済資金を作り、銀行からの借入を返済していくのです。
3.まとめ
中小企業が配当をするのは、とてもレアなケースになります。
普通の中小企業にとっては、配当をするメリットはありません。
もしも、今回の事例のような状況になったら、配当についても考えてみましょう。
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