消費税の仕入税額控除の要件

消費税スタッフコラム

 消費税を納税する際は、売上等に含まれる預かった消費税から、経費等に含まれる支払った消費税を、控除して税務署に納付することになります。

 この支払った消費税を控除することを仕入税額控除といいますが、仕入税額控除を受けるには帳簿と請求書等について保存と記載する事項の要件が消費税法第30条で規定されています。

 帳簿及び請求書等については、7年間保存することになっています。

 ただ6年目及び7年目は、どちらか一方の保存でもよいこととされています。

帳簿及び請求書等の必要記載事項

 また、帳簿には法定事項として、以下の項目を記載する必要があるため、不足している場合には仕入税額控除をすることができません。 

  • 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
  • 課税仕入れを行った年月日
  • 課税仕入れに係る資産又は役務の内容
  • 課税仕入れに係る支払対価の額

 ②の課税仕入れを行った年月日については、伝票を作成した日ではありませんので、伝票の日付と実際の課税仕入れを行った日が異なる場合には、その日も記入する必要があります。

 請求書等についても、記載事項について要件があり、一般的な課税仕入れを行った相手方が発行する請求書等の場合には、以下の項目が必要とされています。

  • 書類の作成者の氏名又は名称
  • 課税資産の譲渡等を行った年月日
  • 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
  • 課税資産の譲渡等の対価の額
  • 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称

 クレジットカードで購入した場合

 最近はクレジットカードでの支払も増えカードの請求明細をもとに帳簿を作成していることも多いかと思われます。

 しかしクレジットカードの請求明細については、請求書等の要件である、課税仕入れを行った相手方が発行しているものではないため、請求書の保存要件を満たさず、また明細では日付、金額、店名くらいしか記載されていませんので、課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容も不足しており、同様に記載要件も満たさないことになります。

 店頭でクレジットカードを使う場合にはレシート等の領収書を貰うかと思いますので、捨てずに取っておき保存しておかないと税務調査の際に仕入税額控除を否認される可能性もあります。

インターネットで購入した場合

 またインターネットで購入される場合についても、後で調査の時にでも印刷しておけばいいやというのではなく、仮に後日注文履歴などが見られなくなり印刷することが出来なくなることも起こりうるので、その場合には保存要件を満たさず仕入税額控除が否認されることもあります。

 そのため面倒ですが、その都度印刷をして、紙で保存しておいたほうがよろしいかと思います。

少額の場合

 税込みの支払額が30,000円未満の場合については、上記の法定事項が記載された帳簿が保存されていれば請求書等の保存を必要としてはいません。

 税込みの支払額が30,000円以上の場合には、帳簿及び請求書等の保存が必要となっています。

 この際、やむを得ない理由がある場合には、請求書等の保存できないので、帳簿にやむを得ない理由及び相手方の住所又は所在地を記載していれば、仕入税額控除の要件は満たしているとみなされます。

 この場合のやむを得ない理由としては消費税法基本通達11-6-3で以下のような場合をあげています。

  • 自動販売機を利用して課税仕入れを行った場合
  • 入場券、乗車券搭乗券等のように課税仕入れに係る証明書類が資産の譲渡等を受けるときに資産の譲渡等を行う者に回収されることとなっている場合
  • 課税仕入れを行った者が課税仕入れの相手方に請求書等の交付を請求したが、交付を受けられなかった場合
  • 課税仕入れを行った場合において、その課税仕入れを行った課税期間の末日までにその支払対価の額が確定していない場合
  • その他、これらに準ずる理由により請求書等の交付を受けられなかった場合

 口座引き落としの場合

 クレジットカードでの支払いの他に口座引き落としで支払うこともあるかと思いますが、上記のやむを得ない理由に該当しないのであれば、請求書等を保存しておく必要があります。

区分記載請求書等保存方式

 2019年10月より消費税が引き上げられ、軽減税率が導入された場合には、2019年10月1日から2023年9月30日までの間は、区分記載請求書等保存方式という、軽減税率の適用対象となる商品の仕入れか、それ以外の仕入れかの区分を、明確にするための記載事項を追加した帳簿及び請求書等の保存も必要となってきます。

 帳簿に追加となる事項は軽減税率の対象となる旨を記載することです。

 請求書等に追加となる事項は軽減税率の対象となる旨と税率ごとに合計した請求額の記載です。

 請求書を発行した者が請求書にその項目を記載していなくても、請求書の交付を受けた者が追記することが可能ですので、請求書を発行する者は請求書などのシステムを新しいものに対応させなくても大丈夫です。

 ただ2023年10月1日以降の適格請求書方式では追記はできなくなりますので、その際はシステムを対応させておかないといけません。

 なお仕入税額控除については基準年度の売上が5,000万円未満の場合に選択できる簡易課税制度を選択している場合には、売上をもとに税額を計算するため関係ありません。

コメント