仕事の代金がもらえない場合に損害を減らすための方法

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 仕事の代金が貰えない場合には、お金が会社に入ってこないので、当然売り上げにはならず、税金もかからないと考えている中小企業経営者の相談を、受けるケースがあります。

 仕事をして、代金を請求できる状態になった場合には、請求した代金が入金されようとされまいと、いったん会社の売り上げになり、法人税や消費税の対象になります。

 仕事をしたのに代金をもらえないという状態が、どれほど危険なことなのかについて、事例を踏まえてご説明したいと思います。

1.代金を貰えないのに利益になる

 解体工事業のN社長は、当期中に大口の工事の仕事がありました。しかし、工事完了後に元請が工事代金をいつまでたっても支払いません。外注業者や重機のレンタル料の支払いは待ったなしなので、N社長は個人の預金を会社に貸し付けて、なんとか支払いました。

 N社長は当然決算は赤字だと思っていたところ、顧問税理士から当期の決算は黒字で、法人税がかかると聞いて驚きました。

2.売上の発生と代金の回収は別問題

 N社長は、会社のお金が無くなり、個人のお金をつぎ込んでまで、何とか支払いをした状態ですので、会社が黒字で、税金までかかると思わなかったのも無理はありません。

 しかし、税金計算のベースになる会社の利益を計算する上で、売上の金額は、代金の回収とは別問題なのです。

3.代金回収できない場合は貸し倒れ

 代金が回収できない場合には、お金は無いのに税金は払わなければならないということになってしまいます。

 これでは、不公平ですので、代金回収できない場合には、回収できない金額を貸倒損失として、経費にすることが出来るようになっています。

4.厳しい貸し倒れの条件

 しかし、貸倒損失として、経費にするためには、非常に厳しい条件が付いています。

 なぜなら、条件を厳しくしないと、実際は回収できるものを、回収できないと言うだけで、利益を自由に減らすことが出来てしまうからです。

5.代金回収できない場合の損害

 代金回収できない場合には、仮に貸倒損失として経費にする条件が整ったとしても、非常に大きな損害を被ることになります。

 代金回収できない場合の損害は、その売上の内容によって大きく異なります。

 社長が自分で動いて稼ぐ手数料の売上のように、売上に直接かかる経費が少ないものについては、社長がタダ働きになるだけですので、損害は比較的小さいといえます。

 一方で、売上の9割を外注費として支払う仕事や、売上の9割の値段の商品を引き渡す仕事であれば、売上代金は入らないのに、大きな支払をしなければならないので、非常に大きな損害を被ることになってしまいます。

6.与信リスクの管理方法

 売上代金を回収できない場合の損害は、思った以上に大きなものになってしまいます。

 現場感覚としても、年々貸倒の事例が増えて来ていると思います。今後は、売上代金回収のリスク(与信リスク)は、しっかりと管理していくことが必要です。

 方法としては、売上の相手の支払能力についての情報を出来る限り集める(信用調査会社のレポートや関係者への聞き込み、現地訪問など)ことと、支払能力に応じた回収条件と売上金額(支払い能力の低い相手の場合には、出来るだけ短い期間で回収し、一回の売上を出来る限り少なくする)を設定するようにしましょう。

7.まとめ

 仕事をして、代金を請求することができる場合には、いったん売り上げになり、法人税・消費税の対象になる一方で、代金をもらえない場合に、貸し倒れとして経費にするための条件は厳しいため、踏んだり蹴ったりの状況になってしまいます。

 目先の売り上げに飛びつくのではなく、与信管理についてもよく考えて、どこまでのリスクをとるか、慎重に判断する習慣を身につけましょう。

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