中小企業の経営課題

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労働生産性と売上予測可能性

 働き方改革関連法が2019年4月から施行され、より一層労働問題は重要になってくると思われます。特に過重労働の問題は、真剣に取り組む必要があります。

 過重労働の裏側にあるのは、労働生産性(1時間当たりの付加価値額)の低さです。

 労働生産性の低い仕事の仕組みのままで、一人当たりの付加価値を高めるためには、労働時間を増やすほかありません。

 労働生産性を高めるためには、それぞれの会社の状況に応じた方法を考えていかなければなりません。ITの活用や、業務の標準化、分業化など様々な手法を組み合わせていくことが必要となるでしょう。

 但し、そうした労働生産性の向上に取り組んでいくためには、その前提として、売上の予測がある程度できなければなりません。

 今年の売上がいくらになるか、全くわからない状態では、ITへの投資額をどの程度にするのか、分業化するための組織を作るために、どの程度の人員配置が必要なのか等々、労働生産性向上のための投資意思決定をすることは不可能です。

 経営者の皆様には、まずは、今年の売上がいくらになるか予想するトレーニングをしていただきたいと思います。安定して業績を上げている会社の経営者は、ほぼ漏れなくこの売上を予想する習慣を身につけています。

 そのようなトレーニングを積んだ上で、なお、予想が全く立たない状態だとすれば、取るべき方法は二つになります。一つ目は、純粋な固定費を最小限に抑えること、二つ目は予想が立てられるような売上の割合を増やしていくことです。

 自立した中小企業を1社でも増やしたいという思いで仕事をしている弊社といたしましては、出来る限り、後者の売上の予測可能性を向上させていく方向に向かっていただきたいと思います。

労働人口減少への対応

 近年、現場の感覚として、若年層の人手不足の加速を感じておられる経営者の方は、多いかと思います。これは、統計データにも表れており、35歳未満の労働人口が、この10年で大幅に減少してきていることが見て取れます。

(単位:万人)

年度 合計 15~24歳 25~34歳 35~44歳 45~54歳 55~64歳 65歳 以上
2006年 6,664 622 1,480 1,413 1,361 1,267 521
2016年 6,648 548 1,175 1,515 1,476 1,152 783
増減 ▲ 74 ▲ 305 102 115 ▲ 115 262

(総務省統計局 労働力調査 統計表第11表 年齢階級別労働力人口に基づき作成)

 今後もこの傾向がしばらくは続くと考えておいた方が、無難ではないかと思います。

 こうした環境を踏まえると、未熟練の若年層を低賃金で雇用することを前提に組み立てられたビジネスモデルは、今後継続していくことが困難になると考えられます。

 現在そのようなビジネスを展開されている経営者の方にとっては、大きく二つの方向が考えられます。

 一つ目は、未熟練の若年層から支持され、競合他社ではなく、自社を選んでもらうことで、低賃金雇用を維持し、既存のビジネスを継続するという方向です。代表的な例としては、ディズニーリゾートが挙げられます。

 そして、もう一つの方向は、若年層以外の雇用によって若年層の不足を補い、既存のビジネスを継続するという方向です。代表的な例としては、高齢者雇用を進めるモスバーガーが挙げられます。

 ブランド力のない中小企業にとっては、前者の方向は、余程特殊なケースを除いて困難だと思いますので、現実的には、後者の方向に向かうことになるかと思います。

 高齢者雇用や、短時間雇用など、若年層のフルタイム雇用ではない雇用で、既存のビジネスを継続する方法を、手遅れになる前に真剣に考え、確立していくことが、これからの事業継続に必要ではないでしょうか。

投資意思決定の基準

 中小企業が危機的な状況に陥る原因として、比較的多いものに投資意思決定の失敗があります。投資を行わなければ、事業の存続・発展は難しいのですが、一方で投資には必ずリスクがありますので、100%成功するということはありません。

 投資に失敗しても、他の事業の利益や潤沢な内部留保でカバーできる大企業よりも、保守的な意思決定が必要です。

 中小企業が投資を行う際には、どこまでのリスクに耐えられるか、失敗した場合に負う傷から回復できるのはどこまでか、ということを考え抜かなければなりません。

 長期間にわたって好業績を維持している中小企業経営者と話をしていると、許容できるリスクの範囲についての基準をしっかりと意識しているように感じられます。

 そして、このリスクの基準を超えるケースについては、悲観的な分析に基づいて慎重な判断をし、このリスクの基準の範囲内のケースについては、楽観的な分析にもとづいて積極的な判断をするという使い分けをしている方が多いようです。

 リスクの基準の考え方は、会社によって、また経営者の考え方によって異なります。

 人件費への投資のリスクを高く評価し、従業員を抱えるリスクは絶対に取れないと考えて、身内だけで事業を行っていく経営者や、設備投資へのリスクを高く評価し、土地建物などの高額の資産と借入金を抱えるリスクは極力取らないように、店舗・事務所等は賃借で調達するという経営者など様々です。

 ポジティブシンキングが大切だと言われますが、長期間にわたって好業績を維持している中小企業経営者で、ポジティブシンキング一辺倒な方は少ないように思われます。

 ポジティブな面とネガティブな面を状況によって、使い分けられる人が長期的に成功しているように思われますが、それが一番はっきりと表れるのが、投資意思決定の局面ではないでしょうか。

効果が表れるまでの「時間」の見積り

 中小企業が危機的な状況に陥る原因の一つに、成果が得られるまでの「時間」の見積りの不足というものがあります。

 新たな設備投資を行ったり、営業活動のために人材投資を行ったり、業務改善のために新たな管理手法を取り入れたり、様々な意思決定を経営者は行っていきます。

 その際に、こうした投資にかかるコストと成果を見積もって、実施の有無を判断することになるのですが、このシミュレーションの際に、投資の実行から成果が得られるまでの「時間」を楽観的に考えて意思決定を行ってしまうケースが多いようです。

 実際には、新たな投資を行ってから、その成果が得られるまでには、当初考えていた以上の「時間」がかかることが多いと思います。その間は、コストはかかるが成果は得られないという状態が続きます。

 投資を行う場合には、投資に直接かかる経費(設備の代金や手数料等)については十分に検討されると思いますが、成果が得られるまでの「時間」にかかるコストの見積りが十分に検討されていないことが多いように思います。

 成果が得られるまでの「時間」にかかるコストについては、保守的に見積りを行った上で、資本金や内部留保のような自己資本で賄うのがベストです。自己資本の不足でコストを賄うことが出来ない場合には、投資の計画を見直すことが望ましいでしょう。

 しかし、どうしても当初の計画通りに投資を行いたいという場合には、返済が当面不要な資金調達(身内からの借入や出資等)や、出来る限り返済期間の長い借入等の方法で、成果が得られるまでの「時間」にかかるコストに備えるための資金を、手許に少しでも多く準備するようにしましょう。

 仕事でもプライベートでも、何らかの活動を始めてから成果が得られるまでには、必ず「時間」がかかります。当たり前のことのようですが、中小企業の投資意思決定の際に、この当たり前のことへの意識が弱いと、非常に危険ですので、ご注意いただきますようお願いいたします。

計数管理能力の不足

 経営危機に陥る中小企業の経営者に共通する要素として、計数管理能力の不足があります。貸借対照表や損益計算書に代表される会計数値は、企業にとっては、体温計や体重計の数値に相当するものになります。

 企業を常に健全な状態に維持する責任を負っている経営者は、常に細心の注意を払って、貸借対照表や損益計算書の数字を把握していなければなりません。

 実際に、中長期的にしっかりとした業績を継続している中小企業経営者は、会計数値を常に把握して、企業の健康状態を確認し、異常があれば原因を突き止めて改善方法を考え、実行するという当たり前のことを、地道に続けています。

 しかし、ほとんどの中小企業経営者は、残念ながらこのような努力を怠っているのが現実です。現在のような低成長時代になり、経営者が会計数値を常に把握している企業とそうでない企業の業績の差は、よりはっきりと拡大していくようになりました。

 会計数値に対して真剣に向き合わない原因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 会計数値は見ても意味が分からない
  • 会計数値は過去の結果でしかないので、見ても意味が無い
  • 会計数値は経理担当者や会計事務所が見れば良い、経営者は報告を聞くだけで良い
  • 会計数値を見たところでやることは変わらないので意味が無い
  • 見ると辛いので見たくない

 会計数値から問題の可能性を把握する能力は、簡単には身につきません。しかし、経営者にとっては、身につけなければならない能力です。

 身につけるためには、基本的な仕組みを理解した上で、毎月、月次決算書の貸借対照表や損益計算書の数字を、注意深く見続けるしかありません。

 過去の数字を記憶し、現在の数字との増減・比率等の変化を把握します。そして、そうした変化が意味するところを、日々の現場での活動と照らし合わせて考えるのです。

 そのような、地道で退屈な作業を、経営者自らがコツコツと続けていくことが出来れば、企業の健康状態も良い方向に向かっていくと思います。

経営者としての金融リテラシー

 中小企業の経営者にとって、今後リスクの一つとなっていくのが、金融リテラシーの問題です。金融リテラシーについて、日本証券業協会ホームページに掲載されている説明は以下の通りです。

 「金融リテラシー」とは、金融に関する知識や情報を正しく理解し、自らが主体的に判断することのできる能力であり、社会人として経済的に自立し、より良い暮らしを送っていく上で欠かせない生活スキルです。

 この説明は一般の個人を対象としたものですが、中小企業経営者の場合には、会社に無用なリスクを負担させないようにするための、経営スキルと置き換えると良いでしょう。

 金融リテラシーが不足していることで、中小企業経営者が損害を被るリスクは年々増加しています。主な要因は、本業の収益率悪化を補うために、金融商品(投資信託・保険・デリバティブ・不動産等)の販売で手数料収入を狙う企業が増えていることにあります。

 お付き合いのつもりで購入した金融商品によって、会社と個人の財産を大きく損ない、危機的な状況に陥ってしまうケースが増えてきていますのでご注意ください。

 しかし、金融リテラシーといってもわざわざ勉強するのも大変ですので、以下の点だけ気を付けていただければ大丈夫です。

(注意点)

  • お付き合いで契約しない(冷静な判断が出来ません)
  • 仕組みが理解できないものに手を出さない(リスクを隠すために複雑化します)
  • 一人で判断しない(自分で思うほど客観的な判断は出来ないものです)
  • メリットの話ばかりする人を信用しない(不誠実さの表れです)
  • 「プロの世界」に手を出さない(素人は搾取されるだけです)

 「プロの世界」というのは、不動産や先物取引など、その世界のプロフェッショナルが取引を行っている分野になりますが、こうした分野に素人が入っていくと、当然カモにされます。

経営者の仕事とは何か

 中小企業の経営課題の大きなものの一つに、経営者が「経営者の仕事」に使う時間が少ないというものがあります。

 どうしたら、「経営者の仕事」に使う時間を確保できるかという点については、次章でご説明することにいたしまして、本章では「経営者の仕事」とは何かという点について、ご説明したいと思います。

 漠然と「経営者の仕事」といっても、大企業と中小企業では状況が異なりますので、中小企業に限定したいと思います。

 また、ほとんどの中小企業にとっての最大の課題が売上増加であることを踏まえまして、売上増加という課題における経営者の仕事に焦点を絞ってみたいと思います。

 売上を増やすための「経営者の仕事」は以下の通りです。

  • 売上を増やすために何をするか(何を止めるか)を決める
  • することを決めたら、「誰が」「どのように」「いつまでに」それをするかを決める
  • 決められた通りに出来ているかを確認し、出来ていなければ出来るように教える

 上記の①は、一言でいえば「方針」を決めるということです。これを行うためには、市場の動向、競合の状況、技術革新の動向などの外部環境について、情報を収集して分析するとともに、自社の商品力、人財・ノウハウの蓄積状況、ブランド力などを適切に把握していなければなりません。「方針」の決定は、まさに「経営者の仕事」で、従業員に任せることはできません。

 上記の②は、一言でいえば「仕組み」を作るということです。これを行うためには、豊富な実務経験と現場の人財とのコミュニケーション、財務数値の理解などが必要になります。「仕組み」作りについては、大企業であれば、経営企画部などの部署で策定することになりますが、中小企業では主に社長または社長に準じる幹部による「経営者の仕事」になります。

 上記の③は、一言でいえば「進捗管理」と「教育」になります。進捗管理を行わない「仕組み」は、画に描いた餅でしかありませんので、全く結果にはつながりません。また「教育」を行わずに、丸投げしているようでは、十分な成果は得られません。これらについては、大企業や中小企業でも数十人規模になると、中間管理職の仕事になりますが、多くの中小企業では「経営者の仕事」になります。

経営者の仕事の時間を確保する

 中小企業の経営課題の大きなものの一つに、経営者が「経営者の仕事」に使う時間が少ないというものがあります。

 前章では「経営者の仕事」とは何かという点について、ご説明しましたので、今度はどうしたら、「経営者の仕事」に使う時間を確保できるかという点について、ご説明したいと思います。

 前章で、売上を増やすための「経営者の仕事」として、①売上を増やすために何をするか(何を止めるか)を決める、②することを決めたら、「誰が」「どのように」「いつまでに」それをするかを決める、③決められた通りに出来ているかを確認し、出来ていなければ出来るように教えるの3つを挙げて説明いたしました。

 つまり、この3つを行うために必要な活動以外の活動を経営者が行っている時間は、「経営者の仕事」の時間を犠牲にしていることになり、売上を増やす機会を逃し、会社の成長発展にブレーキをかけてしまっているのだという認識を持ってもらうことがスタートになります。

 そして、日々の業務日報を付けて、「経営者の仕事」以外のことにどれだけ時間を費やしているかを見直しましょう。日報の付け方としては、「経営者の仕事」とそれ以外を色分けして、一覧できるようにしておくと良いでしょう。業務種類ごとに、時間を集計する機能のあるシステムを使うとより効果的です。

 次に、「経営者の仕事」以外の部分については、①従業員に任せる、②外注に出す、③止めるの3つの方法で、減らしていくようにします。この中で、最も効果が大きいのは③の止めてしまうことです。①と②はコストがかかりますが、③は通常コストはかかりません。

 最後に、そうは言っても、社長が自ら営業マンとして、また現場作業員として、売上を上げなければならない状況の会社がほとんどなのが現実です。 しかし、そのように営業や現場作業をしていたとしても、3つの「経営者の仕事」を意識して、「方針」を決めるために必要な情報収集や、「仕組み」作りのためのノウハウ蓄積、「進捗管理」と「教育」のための実務能力向上を目的として、営業や現場作業をしているのであれば、その時間は将来の「経営者の仕事」につながっていくでしょう。

情報発信力を強化する

 売上の減少に苦しんでいる中小企業に多いパターンとして、「良い仕事」をしているのに、それほど「良い仕事」をしているようには見えないライバルに、仕事を取られてしまっているというものがあります。

 この場合には、2つの問題があります。1つ目は「良い仕事」とは何かということ、2つ目は「良い仕事」だということをどうやって伝えるのかということです。

 まずは「良い仕事」とは何かということですが、自分が「良い仕事」だと思っていることと、お客様が「良い仕事」だと思っていることが一致していれば何も問題はありません。

 問題は、自分で「良い仕事」だと思って力を入れている部分と、お客様が「良い仕事」だと思って評価している部分が一致していない場合に生じます。

 お客様が「良い仕事」だと評価してもらっていると勘違いをして、その部分に力を入れて、実際にお客様が評価している部分を軽視してしまうようだと、ライバルに仕事を取られてしまいます。

 お客様に評価してもらっている部分はどこなのかという、「正しい情報」をしっかりと把握することが情報発信力強化の第一歩になります。

 次に、「良い仕事」だということをどうやって伝えるのかということですが、これについては会社の状況によって、適切な方法を選ぶことが必要になります。

例えば、会社が直接伝えることが効果的な内容であれば、ホームページや折り込みチラシなどが効果的でしょう。

 一方で、会社が直接伝えるよりも、人づてに間接的に伝えることが効果的な場合には、SNSを使った口コミや代理店制度などが効果的でしょう。

 情報発信のルートは、社長や従業員の雰囲気、企業文化や会社のこれまでの実績や業界での位置づけなど、様々な要因によって、効果が上がる方法は異なってきます。

 但し、どのようなルートを選ぶとしても、効果を上げるために共通して必要なのは、情報発信を継続することです。

 以上をまとめますと、売上を増やすための情報発信力強化に必要なのは、①発信すべき情報(本当の強み)を正しく把握し、②適切な情報発信ルートを選択し、③情報発信を粘り強く継続することだと言えます。

 当たり前のようですが、出来ている会社は極めて少ないので、しっかりと実行できれば効果が上がると思います。

事業承継

 中小企業経営者の高齢化が進むにつれて、事業承継の問題が増えてきています。弊社のお客様にも、2代目・3代目の方が増えてきています。

 創業したばかりの経営者にとっても、いずれは直面する問題になりますので、今回は事業承継について取り上げたいと思います。

 中小企業の事業承継で最も多いのは、親族内での事業承継になります。

 親族内での事業承継の場合には、①後継者が継ぎたいと思う事業内容で、②後継者に事業を継続するだけの能力があれば、ほとんどのケースで事業承継は可能になります。

 つまり、親族内での事業承継を考えた場合には、通常の役員報酬を受け取った上で、ある程度の黒字が出る事業経営をしていれば良いということになります。

 一方で、親族内に適当な後継者がいない場合には、親族外での事業承継ということになりますが、こちらは親族内のケースと比べてハードルが高くなります。

 親族外での事業承継を妨げる要因としては、①事業譲渡(株式売却)の条件、②債務保証の問題、③現経営者との関係などが挙げられます。

 こうした問題を一挙に解決できるのは、上場かM&Aということになりますが、いずれも一部の相当な優良企業や特殊な業種の企業に限られますので、一般的とは言えないでしょう。

 上場・M&A以外の方法で、親族外での事業承継を実現するためには、上記の①~③の要因を解決しなければなりません。

 まず、②の問題に関しては、無借金経営(役員からの借入も含めて)の状況を作らなければなりません。そのためには、内部留保を蓄えていく必要がありますので、十分な利益を挙げて、過度な節税は行わずに、法人税等を納税していくことを継続していかなければなりません。

 次に①・③の問題については、現経営者が事業承継後の会社に負担をかけない状態を作っておくことが重要になります。そのためには、役員退職金と年金等で事業承継後の生活費が十分に賄える状態を作ることが必要になります。社会保険への加入は最低限のこととして、小規模企業共済等での積立も出来る限り行い、役員退職金の財源積立も必要でしょう。

 これらの準備は数十年かけて行うことが必要になりますので、親族外での事業承継を考える場合には、創業したばかりの経営者の方も、今のうちから計画的に準備を進めていきましょう。

自己限定

 ほとんどの中小企業経営者に共通する意識として、中小企業は、大企業に利用されて搾取される存在だという「自己限定」があります。

 確かに、大量生産・大量消費の社会では、大企業と中小企業の関係は、搾取するものと搾取されるものの関係だったという部分は否めないと思います。

 しかし、世界全体の供給力の過剰状態の常態化や、IT技術とその利用環境の飛躍的な発展によって、大企業と中小企業との関係は変化してきています。

 その変化の方向性の一つが、大企業と中小企業との役割分担の変化です。

 従来は、生産性の高い部分を大企業が、生産性の低い部分を中小企業がそれぞれ役割分担することで、一つの事業を行っていくというのが通常でした。

 しかし、今後は、新製品・サービスの開発等、生産性の高い部分を、少数精鋭のチームで行うのが中小企業、その商品・サービスの製造・販売といった、生産性の低い部分を、大規模な設備や大量の人員(AIに代替されるまでの間)を使って効率的に行うのが大企業、という役割分担に変化してきている仕事が、様々な業種で増えてきています。

 大企業の経営幹部ほどの報酬は難しいとしても、大企業の一般社員よりは好待遇を得る、中小企業経営者や中小企業の一般社員は、今後増えていくでしょう。

 こうした環境変化の中で、従来通りの「自己限定」のもとに、自立をあきらめてしまっては、折角の機会をみすみす逃すことになってしまうでしょう。

まとめ

 本記事は、2017年2月から12月の11か月間、税理法人阿部会計の顧問先向けの会報誌に連載した記事を、加筆修正したものです。

 中小企業経営者の方に、頭の整理をする際のお役に立てればと思い、掲載いたしました。

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